ゴーストライター #77
- 2011年11月28日 23:31
- 映画:サスペンス・ミステリ
- イギリス映画, ユアン・マクレガー, ロマン・ポランスキー
’10年、フランス・イギリス・ドイツ
原題:the Ghost writer
監督:ロマン・ポランスキー
原作:ロバート・ハリス
脚本:ロバート・ハリス、ロマン・ポランスキー
撮影:パベル・エデルマン
音楽:アレクサンドル・デプラ
キャスト:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、オリビア・ウィリアムズ、トム・ウィルキンソン、ティモシー・ハットン、ジョン・バーンサル、デビッド・リントール、ロバート・パフ、イーライ・ウォン
今頃で何ですが、せっかくのポランスキーの傑作。ブログに感想UPしておこうかな、と。
セザール賞監督賞、ベルリン銀熊賞、ヨーロッパ映画祭作品賞その他受賞。
全体的なムードといい、事の起こるテンポ、盛り上げ方等々、全てにおいてキッチリ計算されていることが伺える。めったにないサスペンスの傑作。
薄暗いブルーグレイのトーンすら気持ちが良くて、たっぷり世界観にハマってしまった。御年87歳にして、入念に磨かれ余裕のある技術が、文句なしに素晴らしい。ガチャガチャしたアクションがたっぷり含まれたタイプのサスペンスの好きな人にとっては、物足りない作品であるかもしれない。でも私にとっては、至福の時でしたね!
こんなサスペンスを待っていた!サスペンス映画って今頃だと、すでに瀕死の状態のジャンルにしか思えないじゃないですか。それなのに、この冴えわたった演出は、一体なんなんだろう!?何が違うのだろう。とにかく、何もかも違うんですよね。最近で満足したサスペンスというと、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』。あ、『ミレニアム〜』は、今度フィンチャーがメガホンを撮るのよね。そちらもなかなかの出来らしい。あちらの『ミレニアム〜』は、『羊たちの沈黙』を思い出させる佳作だったのだけれど、すでに慣れ親しんだ感じから出ることはなかった。フィンチャーがこれをどう調理するか?楽しみ!
さてこちらの作品に戻って、個人的には、あの大傑作『ローズマリーの赤ちゃん』を思い出させる出色の出来。あれは心底ゾッとさせるラストで、私的ホラーの大傑作の10本に入る作品なので、それに迫る傑作というと、かなりの満足度だったのですよ。『ナインスゲート』は私好みで好きだったし、『戦場のピアニスト』も良かったけれど、この作品には唸らせられた。
見終わった後、「トニー・ブレア以外の何者にも思えないんだけれど、なんて恐ろしい作品を書くんだろう?」なんて話していた。痛烈な鋭い毒を感じさせるじゃないですか。これはさすがにアメリカでは評価されないだろうから、アカデミー賞なんかは到底ムリだったんだろうなw。
ラストの無駄のないカメラワークがまたたまらない。ああそう来るだろうな、という嫌な予感が的中なので、感情だけで言えば「やっぱり」としか思えない終わり方。にもかかわらず、あのきっちりムダのない感じや、相反する高揚感に背筋がゾクゾクして、終わった後に思わずガッツポーズをしたくなるぐらいだった。
最後に印刷した紙が散らばるところが、なんだか象徴的に思えてしまったのは、私だけだったんだろうか?つまりどういうことかというと、ずっとPCで小説を書いたでしょう?だから本来、メモリスティックでも良いはずなのに、ラストの完成パーティの際には、わざわざ印刷した紙を持っているんですよね。それが最後に散らばる。それを見て、デジタル化迫る新しい時代が、古い時代を駆逐するような印象すら抱いてしまったのは、私の考えすぎなのか?最後に紙がパーッと散る。ああいう見事さとクラシカルな前時代性は、デジタル化された世界では味わえないものなのだよなあ、と。だからこそ、私は最後の感慨が余計ひとしおしみじみと感じてしまったのだ。何か苦い、何とも言えない感覚が心の中に残った。素晴らしいラストですよ。
※ストーリー・・・
ゴーストライターとして元英国首相ラングの自叙伝の執筆を依頼された文筆家。米国にあるラングの別荘に招かれ、取材に当たった彼は、自分の前任者が不審死したことに疑問を抱く。さらに、ラングが語る自らの過去のエピソードにも違和感を覚えるようになり・・・
・ゴーストライター@ぴあ映画生活