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モールス #62

’10年、アメリカ
原題:Let me in
監督・脚本:マット・リーブス
原作:ヨン・アイビデ・リンドクビスト
製作:サイモン・オークス、アレックス・ブルナー他
製作総指揮:ナイジェル・シンクレア、ジョン・プタク他
撮影:グレッグ・フレイザー
音楽:マイケル・ジアッキノ
キャスト:コディ・スミット=マクフィー、クロエ・グレース=モレッツ、イライアス・コティーズ、リチャード・ジェンキンス、カーラ・ブオノ

 

去年日本で公開になった『ぼくのエリ 200歳の少女』のリメイク。オリジナルのスウェーデンの映画の出来が素晴らしいので、それを丁寧になぞったこちらのハリウッド・リメイクも、決して悪くない出来になっている。

特に、細かい描写に関してはこちらの方がずっと分かりやすい、とすら言えるかな。オリジナルを見て、うっすら感じさせるテーマ性を、よりハッキリ描き出しているのがハリウッド版。よりエグく、ホラーテイストに仕上がっている。いや、前者にも怖いシーンはあるんだけれど、典型的なホラーらしい描き方がなされない上に、何か別のもので覆い隠されているから、印象が違ってくると言うか・・。私はオリジナルには、あの見えない闇の濃さ・ミステリアスさで、グッと惹きつけられてしまった。オリジナルにあった底知れない魅力を、全てすっかりクリアに説明してしまったリメイクは、よく出来ていると思う反面、残念に思ってしまうことが多かった。この感じ、たとえば『バニラ・スカイ』は『オープン・ユア・アイズ』に全く敵わない、と思うタイプの人になら、この気持ち分かってもらえるよね?

それでも、オリジナルより良かった点を挙げるなら。「Let me in」という原題が示すように、人間ならざる存在が棲むべき場所と、死すべき存在の人間たちが棲む場所、これらの棲み分けがしっかりなされている、この詳述を繰り返すところは、リメイクの方が理解が容易く出来て良かったかもしれない。以降、ネタバレで語ります。

以降、ネタバレ::::::::::::::::

私が一緒に見た友人は、ただ吸血鬼が生きていくために少年が上手く騙されているだけの話じゃないか、という感想だった。確かにその通りで、私が言うような、ラストで人間社会からドロップアウトしてしまうところの面白さ、「現実とイマジナリーラインの境界線を超えるカタストロフィ感」は、この『モールス』の方ではほとんど感じない。むしろ年老いた同居人のあの哀れな末路と、さらに強調されるかのような少年の未来がより強く結びついているのも、こちらのリメイクの方だ。冒頭での少年のかぶるエド・ゲインまがいの被り物や、少年だった頃の証明写真(痣つき)で、懇切丁寧に語られる。どんな鈍い人にも分かるだろうと言わんばかりに。

アウトサイダーに憧れる気持ちは、おそらく少年自身の内部にもあったのだろう。弱いものには徹底してストレスを感じる人間社会。少年が「自分から」彼女を招き入れるという気持ちと、人間は本来招き入れてはいけない悪の存在である彼女の属する世界。この微妙で難しいバランスを、淡い恋として描かれていたオリジナルの方が、より爽やかに感じさせ、表現としても成功をおさめている。たとえ日本版『ぼくエリ』に大失点となるモザイクがあったとしても。極めて難しいバランスの上に、奇跡のように成り立っているのがオリジナル。オリジナルには文学作品のような味わいがあるけれども、ハリウッドリメイクの方には、ジャンル映画として落としこんでしまう代わりに、より饒舌な説明がなされているのだ。いわば象徴の扱い方を、噛み砕いて説明してしまうところが、よくも悪くもアメリカ映画らしい。象徴の扱い方の下手な日本映画にとっては、勉強すべきところが多々あるのかもしれない。

 

※ストーリー・・・
83年、アメリカ・ニューメキシコ州。学校でいじめられている12歳の少年オーウェンの家の隣に、不思議な雰囲気を持つアビーという女の子が引っ越して来る。ふたりは少しずつ仲を深めていくが、同じ頃、町では異様な連続無差別殺人が起こっていて・・・

 

モールス@ぴあ映画生活

 

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コメント(15件)

  1. 思い返すと血が欲しくて欲しくてたまらない飢餓感もオリジナルのほうがより深刻に感じられたような気がします。このリメイク版はとても美しく洗練された作品になってたと思うんですけど、そのぶん大事な味わいも洗い落としてしまったのかもしれません。

  2. これ、男目線から見るとオリジナルよりまだ救われてる気がします。
    オリジナルはぶっちゃけ、少女の姿をした狡猾な男性ヴァンパイアが忠実な下僕を作り上げる話で、オスカー少年は自らの運命をわかっているのだろうか?という辺りが切なくも恐ろしかったのですが、こちらは去勢少年の設定を切った分、主人公のオーエン自らの決断だという事が強調されているんですね。
    アビーの本心がどうかは兎も角、苛酷な未来が待っている事を承知で、愛する少女を自分が守る、という主人公の決意が見える分、ラストシーンでの印象はずいぶんとすっきりしていました。

  3. かのんさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    ああ、なるほど「飢餓感」。ハリウッド版の方がホラーテイストになっているのに、オリジナルの方がより飢餓感を感じる。かのんさん、さすがです!
    確かにおっしゃるとおりで、エリが豹変する恐ろしさをより感じるのはオリジナルの方なんですよね!『小さな恋のメロディ』のようにみずみずしいにもかかわらず。このバランスが絶妙でした。

    私の友人は、オリジナル版はより「此処ではない何処か」への旅立ちを感じ、アメリカ版の方は「どこにも行けない感」がある、なんて言っていて、したり!なんて頷いてました。

  4. ノラネコさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    なるほど、ノラネコさんはオリジナルの方が「下僕を作る物語」である。と思われたのですね。これは、その性的嗜好のみを取り出して検分すればその通りではありますが、少年がまだ性戯の意味を充分に理解していない状態である、ということを踏まえると、その性的嗜好の意味する基本路線というものは、変わらないように思うのですよ。
    つまり、オリジナルであれ、ハリウッド版の方であれ、少年とバンパイアが、擬似恋愛の形を保っているのは、少年が第二次成長前であるので、元々持っている性的嗜好が何であるか、それがどう描かれているかにかかわらず、意味合いが曖昧になっているのではないか、と。
    私は、オリジナルのオスカー少年は自分の運命が分かっていない、だからこそ怖いと思ったのですよ。
    だからこそラストの疾走感、別の場所に行く(「別の世界に旅に出る」)未来への喜びも感じられたのではないか、と。

    アメリカ版の方が、未来への暗さが強調されて描かれていた分、より少年が自覚的であり、だからこそ彼には未来がないし、アビーについていくことがただの社会からの脱落でしかないんです。

  5. こんばんは。

    ハリウッド・リメイクと云う事で心配していましたが、オリジナルに負けないぐらいイイ作品でしたね。
    周りの大人を排していたので話がより解りやすくなっていましたね。
    『ヒットガール』の暴れっぷりも良かったですが、こちらの演技も良かったですね。
    2人の未来が明るくない事は既に作中で示されているので、余計に切なかったです。

  6. 健太郎さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    個人的にはオリジナルの方がずっと好きではありますが。
    ただ、わかりやすさで言えば、こちらの方がずっと分かりやすく描かれていました。
    クロエ・グレース・モレッツちゃんの出演作、ヒットガールの次にはコレ!と楽しみにしている人がすごく多かっただろう、と思うのですが、これにはみんな満足しているでしょうね!




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