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ロスト・アイズ #41

’10年、スペイン
原題:Los Ojos de Julia
監督:ギリェム・モラレス
製作:ギレルモ・デル・トロ、マル・タルガローナ
脚本:オリオル・パウロ、ギリェム・モラレス

ベレン・ルエダ      : フリア
ルイス・オマール     : イザク
パブロ・デルキ      : イヴァン
フランセスク・オレーリャ : ディマス検事

 

ギレルモ・デル・トロ製作のスパニッシュ・ホラー、さらに『永遠のこどもたち』と同じベレン・ルエダ主演、ということで、期待して見ると、「アレ?ちょっと違う」と思ってしまう人もいるかもしれない。この作品は、結論から言うと普通のホラーではないのです。どちらかというとギレルモ・デル・トロ自身が監督した『デビルズ・バックボーン』に似ている。

ホラーではない、と先ほど言ったのだけれど、スパニッシュ・ホラーという範疇にはきっと、ちゃんと入っている。スパニッシュ・ホラーって、ホラーの考え方自体がそもそも、Jホラーや他のホラーとはどうやら少し違うようなのです。

スパニッシュ・ホラーはどこか、私たちが普通に見ている世界から少しズレて、見えない部分までを含んだ「人間の人生」、ということを感じさせる作品が多いなあと。Jホラーはどちらかというと、「霊ありき」になってしまう。霊が出てきて、それは見えないから怖いもの、不条理なものという観点。「恨み」であったり「この世への執着」であったり、そうしたものを体現させたもの、という解釈が多い。だから、Jホラーを見ると、そこには必ず霊が出てくる。スパニッシュ・ホラーはむしろ、「ホラー」という典型的「ジャンルムービー」ではないんですよね。むしろ哀しみの方を感じさせたり、ファンタジー的であったり、人間ドラマ的であったり。必ずしも怖いわけではないんですよね。

『デビルズ・バックボーン』を私が見たのは、ギレルモ・デル・トロの名を知らなかった頃で、ただペドロ・アルモドバルが製作をしていたので観に行った。ホラーっぽい宣伝をしている割に、ホラーじゃないじゃん!なんて思いながら見ていたのだけれど、これは暗いヒューマンドラマに近くて、霊が出てくるのを待ってると、なかなか出てこないんですよ。アレハンドロ・アメナーバル監督の『アザーズ』には感激してしまった。これは霊が出てくる理由は怖がらせるためなどではなくて、あくまでも人間とその妄執を描きながら、つまり、その部分はJホラーとさして違いはないのに、感動を覚えさせたり、秀逸な出来の悲しい物語になっているところ。「ホラーがジャンル的ではなかった」ことに対して、一番感激したのかもしれない。ジャウマ・バラゲロの『REC』なんかも、ゾンビが出てきたりするけれど、ジャンルムービー的な「ゾンビ」ではないからこその勢いを感じさせる。『REC2 レック2』になるとさらにハッキリするんだけれど、感染がゾンビであることからも外れてしまったりする。私はまさかそこをズラしてくるとは私は思わなかったので、少し驚いてしまったのだけれど、ああ、スペインならではだなあ、なんて思ったりもする。『パンズ・ラビリンス』なんかも恐ろしいファンタジーで、ホラー的にゾクゾクさせるけれども、「怖さ」というのは、人間の中に描かれているじゃないですか?ホラーテイストなファンタジー部分のおかげで、主人公は救われている。『永遠のこどもたち』も、面白く感じさせる部分はホラーの部分が、母の愛に上手く結びついているところですよね。そんな風に、「スパニッシュ・ホラー・プロジェクト」の作品群なんかを見れば良く分かるのだけれど、決して怖いものが前提ではないんですよね。ホラーの考え方が違うところが面白い。ここに挙げた作品群は、良質で、名の知れたものばかりなので、まだ観てなかったら是非観て欲しいですー。

さて、この作品に戻って。ここでは、まず、「目が見えなくなる恐怖」、次に「見えないことで感じさせる恐怖」を描き、最後には、「本当は見えているからこその恐怖」、を描く。ここが上手いな、と感じさせた。

怖いと感じさせる部分は、見えないものと、見えるものの間にある。この考え方がすごくスペインぽいんですよね。

で、言っちゃっていいかな?見る予定の人は、この先を読まないでください。














途中で、犯人が分かってしまう。つまり、そこでこの作品は完全にホラーとしての勢いを失してしまうんですよね。怖さの原因が分かってしまうのだから、当然ですよね。そうなると、最後が冗長に感じさせてしまう。

ところが、ここでこの作品は一転するんです。今度は主人公が目が見えるようになる(手術の結果として)。今まで目に見えないことの恐怖を描きながら今度は、目が見えるからこその恐怖を描く。犯人は、主人公が目が見えていないと思っているので、犯人を欺かなければいけないのです。本当は見えているのに。

オチがあまりに弱いので、全体的にはもう少し、な作品ではあるけれど。スペインらしいサイコサスペンスとして、そこそこ楽しめた。

 

 

 

※ストーリー・・・
先天的な病で視力を失った女性サラの首つり死体が発見。警察が自殺と断定する一方、双子の妹フリアは他殺を疑う。フリアは姉に恋人がいたことを突き止めるが、誰もその男の顔を覚えていないという。そして姉と同じ病が進行してフリアも視力を失っていき・・・

 

ロスト・アイズ@ぴあ映画生活

 

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コメント(8件)

  1. 個人的なことになってしまうんですけど、だいぶ前に視覚障害者の知人と交流があって友人レベルでの介護サポートも経験したことがあります。その僅かな知識や経験からでもこの映画の「目が見えない」という要素があまりにいい加減で馴染めず違和感をずっと引きずってしまいました。特に序盤の施設にいた視覚障害者の描写はまるでモンスター扱いですからね。

    せめてその辺りを丁寧かつリアルに描いてくれればもっとシリアスに引き締まった作品になったんじゃないかと思います。最後に目が見えるようになってからの犯人との駆け引きはなかなかスリリングでした。

  2. かのんさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    なるほど、ご自分の経験からちょっと納得のいかないところがおありだったのですね。
    こういうのって結構響いてしまうんですよね。
    序盤の施設に居た視覚障害者は、妙に恐ろしい描写ではありましたけど、よくよく考えれば普通に目が見えない、というだけの設定だったわけですもんね(笑)
    設定に無理が少しある中で、強引なやり方というのは結構ホラーには多いので、私はついつい別にいいか、なんて許してしまいましたw

  3. こんばんにゃw
    休みなので夜更かししてますw

    つい今しがた見終えました
    パッケージに騙されたクチですwwわっはっはっ

    だって前半で、そー思わせるフリもあったりして、なかなか出てこないと思ったら・・・
    そっち系かよっ
    ラスト30分くらいからは「うおぉっ」って見てましたww
    この状況に、閃いたのがJoJoの承太郎vsディオの戦い
    「止まった時の中では動く努力をするのに、時が流れている時は動けないなんて」
    (やられたフリをしている状態のときですね)
    見えてるのに見えてないフリなんてwこういう状況下ってゾクゾクします(笑)

    ツッコミたい所もあるけどボクはそーとー楽しめました
    うまく作ってますなーと満足。

    あと主人公って、わがままですよね?
    そこにちょいちょいイラッとしてました(笑)

  4. サイ5150さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    お!今さっき見ましたか。嬉しいな〜♪早速お話しに来てくれて!そうそう、パッケージにはこの映画、ついつい騙されるんですよね。ファーストシーンなんかにも。
    でも、この裏切り方・・さすがスペインならではですよね!

    サイさんは、そーとー楽しめたんですね。うん、ホラーが普段好きじゃない人には、結構不評だったりもするんですけど、ホラーをたくさん見ている人には評判がいいんですよね!サイさんにも好評で嬉しいです!
    あっジョジョ思い出しましたか。私、ここでは書かなかったけど、私もそう思いますっ☆
    見えているのに見えていない振り、あそこは楽しかったですよね〜!グッと来ました。
    サイさんも私も、ギレルモ・デル・トロ製作モノは個人的に合いそうだから、今後もチェックですよ〜♪

    えっ?主人公がワガママ?う・・それは全然気付かなかったですw

  5. >>えっ?主人公がワガママ?う・・それは全然気付かなかったですw
    ま~、ワガママというかお嬢さん育ちというか・・・
    旦那に姉の事より自分の視力の事を考えてくれと言われて納得したと思ったら
    翌日には「見えない男がいるのよ!」と旦那を振り回したり、
    手術後、入院しなさいと言われたのに「病院は嫌っ」って自宅療養にしたり
    ストーリー上しょうがないけど「めんどくさい女(ヒト)だなぁ」って思ったのでしたw
    (その不安定さが心の葛藤なんでしょうけど・・・男側からすれば大変ですよ)

    >>ホラーが普段好きじゃない人には、結構不評だったりもするんですけど
    ほ~、そうですかぁ。
    いい裏切り方だと思うんですけどね~。ボクは「そーきたか!」とニヤッとしたけどw

    ギレルモ・デル・トロは「ミミック」を見て好きになりました
    擬態のアイデアと地下鉄の廃駅からの脱出劇とかB級魂が震えました

    ウィキペディアで今、見て知ったんだけど「デビルズ・バックボーン」は
    「ブレイド2」より前だったんすねデビュー作の「クロノス」は見ましたか?
    フランケンシュタイン風な哀愁漂う作品ですよ
    「デビルズ・バックボーン」「パンズ・ラビリンス」系のダーク・ファンタジーっす

  6. サイ5150さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    アハハ・・、主人公がワガママなのに気付かなかったのは、私がナチュラルにワガママだからなのかも!?私も面倒臭いとよく言われます・・・(-“ー;)
    この作品を作った同じ製作グループの、『永遠の子供たち』と比べてみると、旦那さんはいつも途中で居なくなってしまいますねw
    きっと「か弱い女性がたった一人で苦難に向かわなければいけない」、という状態を作り出すために、いつも男が役立たずなのかもしれませんよ!?・・・なんちて

    おっ、サイさんは『ミミック』を見て好きになったんですね!私もよく考えてみれば、『ミミック』は『デビルズ・バックボーン』より先に見てました。でも、ギレルモ・デル・トロという名前を知らなかったし、覚えてもいなかったんですよね。ミミックは面白かったなあ、友達の家で、超盛り上がりながら見ました!個人的には、ロドリゲスの『パラサイト』を思い出しました。

    あ、私『クロノス』は見てないんですよ、これまだ。DISCASでは扱ってないんで、TSUTAYAの店舗であるかなあ・・。へえ、これダーク・ファンタジー系なんですね。何となくギレルモ・デル・トロで吸血鬼と来たら、『ブレイド2』、『スプライス』(←製作)を思い出す感じなのかなーって想像してました。見つけたら見てみたいです!

  7. デビルズ・バックボーン、なつかしいです。あれはよかった! 我が家での感想は   http://bojingles.blog3.fc2.com/blog-entry-995.html
    パンズもアザースも、いいですね。

    本作は、見えない恐怖が一転して…というのが、もっとも気が利いた展開だったと思います。

  8. Contact42010さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
    ボーさんですね!コメント欄変えてしまっててゴメンナサイ。
    うん、私もパンズ&アザーズもどっちも大好きです。
    この作品も、途中からの展開があって俄然、面白くなりましたよね。




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