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ダンシング・チャップリン #30

’11年、日本
監督:周防正行
振付:ローラン・プティ
音楽:チャールズ・チャップリン、フィオレンツォ・カルビ、J・S・バッハ、周防義和
キャスト:ルイジ・ボニーノ、草刈民代、ジャン=シャル・べルシェール、リエンツ・チャン、ローラン・プティ、ユージーン・チャップリン

 

ダンスが映画の中に出てくるものは、兎角大好きでつい観に行ってしまう。そんな人はもちろん私だけではないだろうけど。

ミュージカルについて上手いことを言った人が居る。「まるでミュージカルは”幕の内弁当”みたいだ」と。音楽も、物語も、ダンスも楽しめる。イイトコ取りのオカズ三昧。たとえ物語が多少粗があっても強引に楽しめてしまうのは、それがミュージカルの特質だと。

この作品を例えて言うなら、カツ定食、てとこかな。クラシックバレエを観に行けばものすごく高額。良い席を取らなければ、遠くて顔も見れないような場所で我慢しなければならないのに、映画にはその必要がなく、映画館値段で味わうことの出来るこの贅沢!さらに、この作品は一部と二部に分かれていて、一部ではそのバレエが出来るまでの過程を楽しみ、二部ではその完成形を楽しむことが出来るという。ご飯とオカズが別々に出て来て一体となる、カツ定食!さらに美味しいことに、バレエ自体がいろいろな映画のシーンで構成されているという、ミュージカル「アンコール!」的な美味しい構造になっているので、単にカツ定食というより、カツ自体が何層にも楽しめるミルフィーユ(カツ丼屋にこんなのあったよね)。

この作品は、バレエを楽しみに来る人も居れば、チャップリンの映画を楽しみに来る人も居るのかな。『Shall We Dance?』の周防正行監督のパートナーにして主演女優・バレエダンサー、草刈民代さんのラスト・ダンス、だなんて。映画好きなら絶対行かねば!なんて刺激を受けて、ずっと前から観たかった作品。

一部にて周防監督その人の姿も出てくるのだけれど、眼鏡をかけた知的で静かな人で、とても素敵だなあ、なんて思ってしまう。奥さんに対する愛が存分に感じられる二部にもブラボー!草刈民代さんのバレエも本当に見事で、これで引退してしまうなんて、何かの冗談にしか思えない。一つ一つのバレエが本当に印象深い。二部「チャップリンと踊ろう」周防正行版、存分に楽しむことが出来た。

ただ、個人的には、一部の存在する必要性をそれほど感じなかったのが残念。「バレエが出来るまでの過程と、バレエの本番を足して、一つの作品にしたのは、世界で初めてだ」と、チャップリン役のルイス・ボニーノさんは言うけれど、実は『サロメ』という作品が先にある。こちらの作品の出来映えは、本当に素晴らしかった!一部のバレエが出来るまでの過程を見せるにせよ、それ自体が一つの作品であるかのよう。この一部がまるで実験的アート作品のようになっていて、監督役も別に立て、「ただのメイキングビデオでない」、「ドキュメンタリー」に仕立て上げていた。私はずっと前に見たけれど、あの驚愕は未だに忘れられない。『サロメ』という作品を鑑賞するに当たり、興味ふかい知識を与え、より考えさせるような作りになっていた。

その素晴らしさとついつい比べてしまうせいか、周防監督の作ったこの一部は、訴えるところが弱すぎるように感じてしまって仕方がなかった。ダンサーを交代させたことや、公園で撮影することへのこだわり。ルイス・ボニーノさんの偉大さ。そうしたところは確かに伝わったけれども、真面目な普通のメイキング映像に、退屈してしまったのは確かだ。

とは言え、「ルイスが出ないね?あ、来た、アンコール!」・・・というシーンで一部が終り、二部が始まるところは格好良かった。いよいよ楽しみにした本番。何より素晴らしいのは草刈民代さんのダンス。これを見るためにずっと待ってた!という。「チャップリンに成りきる」のではなく、自己流に見せることに苦心したという、ルイス・ボニーノさんのチャップリンも堪能出来たし。

公園のシーンに関しては、正直私はそこだけ浮き出ているかのように感じてしまった。公園で警官が踊っているシーンなのだけれど、舞台で踊っているシーンの続く中、ここだけ公園でロケをした。監督にとっては、チャップリンにとって思い入れのある「公園」という場所をどうしても描きたかった、ということであったが。しかし公園で踊るのは、チャップリン役ではない。緑のある景色、という映像は、見ていて目に心地良く思えるのは確か。でも、全体的な構成からは単にはみ出しているし、「舞台のシーンとのつなぎで公園に迷いこんで来た」というような”繋ぎ”もないため、唐突感が否めないように思えた。

全体的に少し精彩を欠くようにも思えてしまった部分があったのが、残念ではあるけれど、バレエやダンスの好きな人にはきっと楽しめる映画ではありましたー。それほどチャップリンの映画を多く見ていない私にも、もっとチャップリンを観よう!と思えたし。何より民代さんが素敵。奥さんを踊らせたいという監督の意向が、じわっと来るのだよなあ。

 

 

※ストーリー・・・
第一幕では、周防監督とR・プティの対話や、草刈民代のほか海外のダンサーが多数参加した60日間のリハーサルの模様などを収録。第二幕では、『ライムライト』『街の灯』『モダン・タイムス』といった名作を下敷きにした13演目のバレエが映し出されていく・・・

 

ダンシング・チャップリン@ぴあ映画生活

 

 

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