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『蝿の王』 ワンツーワークス

舞台『蝿の王』を見て来た!吉祥寺シアター、最終日のアフタートークショーつき。劇団はワンツーワークス。

ウィリアム・ゴールディングの原作を大胆にアレンジ・・・というか、全くの別物でしたけどね。登場人物の子供たちを、大人の、スーツを着たサラリーマンに。舞台を無人島から日本の会社のオフィスに。脚本家の古城十忍氏は、「自分はこのように『蝿の王』を見た」と言う。

子供たちにとっては初めこそパラダイスだった、開放感溢れる無人島。ここでは代わりに「新しく配属された真新しい部署」。新天地へと、希望に満ちてやって来たはずの登場人物たち。しかし本当のリーダーを決めようとした辺りから、何となくグループに別れてしまう。すぐにイガミ合いは始まり、闘争は熾烈さを極めて行く・・・。

パワハラ・セクハラに敏感な女子の言葉も、場の雰囲気を悪くするに十分足りている。が、次第にストレスの高い場の雰囲気に押されてゆく。強い発言力を持つ仕事の出来る(と思われる)男性の意見がまかり通ってしまう。人の心をズタズタにするような言葉の暴力は、聞いていて心が心底冷え切ってくる。おそろしや・・・。自分が会社の歯車の一部であることに安心感を持ち、一生懸命働いていた若い社員も、いつの間にか強制排除され、職場放棄をしていく。

会社勤めをしたことのある私たちには、見ていて胃が痛くなるような展開。あーもう大っ嫌いだ〜!っていう、地獄絵図を見せられた感じ(笑)。私にはこうした職場は本当に性に合わなかったな。たった8人という小さい中での人間関係なのに、いつしか生死をかけた戦いの様相をしている。ウンザリするような出来事や相手を攻撃する言葉で、心が音を立ててボキボキ折れて行った。

人の心に巣食う獣性を表すかのように、登場人物が豚の面を被る動きが面白い。心が痛くなるような台詞だけの応酬が続く中、突然音響も照明も変調し、場面転調や時間の経過を示す変わった動きを取り入れている。そして、「ムーブ」。これが観客の心をつかみ、退屈さから吹き飛ばしてくれた。何でも、「ムーブ」はこの劇団の特徴で、毎回ダンスともパントマイムともつかない動きを見せる。決められた0秒間で一斉に皆が急に顔の表情を変え、それぞれが表現力豊かに動き出す「ムーブ」。ダンスの即興でポーズを取るのとちょっと似てるかも。

難を言わせてもらうなら。原作の『蝿の王』は、子供たちが思いがけず得たパラダイスを初めに思い切り喜ぶ。何もかもが自由で素晴らしい世界に思え、その喜びを謳歌する。団体行動を円滑に進めよう、協力し合おうという中で、いつしか子供たちという純粋で美しい存在が生死をかけた殺し合いへと発展していくところが心底恐ろしかった。

この劇で足りないように思えたのは、そうした初めの協力しあう喜びである。人間の善の部分、「表面的」でも構わない、そう社会に向けて一応人が被る「面」である。それを一つ剥けば獣性の人間性が顔を見せる。この落差があった方が、より面白く見れたように思う。そして主人公より、圧倒的に悪役が強すぎだ!(笑)(←「女梶木さん」(重藤良紹演じる))そして主人公はもっと倫理的で最後まで人間性を保ち、抗って戦うはずなのに、この主人公はあまりに弱すぎる。単に日和見主義者みたいだった。

とはいえ、なかなかに面白い舞台だった。全然退屈はしなかったから。

 

2011/01/24 | 舞台・演劇

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