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■31. ぼくのエリ 200歳の少女

ぼくのエリ’08年、スウェーデン
原題:Let the Right One in
監督・編集:トーマス・アルフレッドソン
製作:ヨン・ノードリング、カール・モリンデル
原作・脚本:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト 『モールス』
撮影:ホイット・バン・ホイットマ
音楽:ヨハン・ソーデルクビスト
美術:エバ・ノレーン
編集:ディーノ・ヨンサーテル


カーレ・ヘーデブラント  オスカー
リーナ・レアンデション  エリ
ペール・ラグール  ホーカン
ヘンリック・ダール  エリック
カーリン・ベリィクイスト  イヴォンヌ
ペーテル・カールベリ  ラッケ
イーカ・ノード  ヴィルジニア


これよ、これ!私はこういう映画が見たかった。
’08年の作品なので、少し遅めの公開なのだけれど、種々の賞を受賞しているがために、公開にこぎついた作品。こういうものこそ良作が隠れている可能性は大!そうでなくとも信頼している映画館、銀座テアトルだもの、期待してしまう。

ストーリー自体はホラーテイストだけれど、神秘的な様相がたまらない。静謐さの中に何か見知らぬものがそこにある。不審なものが目の端で蠢いているようなゴロっと感。目を離せば、何かを見逃してしまいそうで、緊張感が漂っていて。どこか切なくて、ひんやりとしている・・・。
物語にベッタリと入り込むタイプの話ではないの。キャラクターに愛着を寄せたり、共感出来たりはしない。物語と自分とに一定の距離が、常にある感じ。

ただ単にジャンル映画としてのホラーではないのだ。もちろん違う。では何故?初恋を描いているから?初恋なのに、少年の相手は200歳だから?何故だろう、どうしてだろう。そんな風に自分から汲み取っていくことで、物語に自ら近づいていくことを必要とする。こんな風に、想像力を刺激する作品が私は一番好きだ。もちろん、好き嫌いはありそう。

エリには、苦悩や罪悪感が描かれていない、と指摘する人が居た。確かに、彼女には業の深さだけがそこにある。長い生を過ごしていながら、彼女は成長が止まったままのようだった。見た目だけでなく。
あれは純粋な悪だったか?もしくは、「罪悪感」という人間らしい感情を得る前に、成長が止まったまま、魂を失った存在だったか。人間を食料とすることに対する罪悪感や、彼女の魂の成長はこれまでの彼女が「生きて」きた中で、描かれていなかったように思う。にもかかわらず、本能剥き出しの存在。そこが恐ろしい。闇の中の存在なのだ。

原作の原題は、「モールス」。壁一枚を隔てて、エリとオスカーがやり取りをするシーンがある。言語ではなく通じ合う彼らの合図。だが、映画のタイトルは、「正しきものを中に入れよ」、だ(英語のタイトル。スウェーデン語のタイトルもおそらく同じ意味かな?と思われ)。

その本能剥き出しの、善悪の区別のつかないエリは、オスカーにとって「正しきもの」だったのか?それは分からない。
少年との初恋がどうなってしまうのか、どんな行末が待ち構えているのか、方向性も見えないまま突き進む。次に何が起こるかを、見逃してはいけない!そんな迫力が不思議とある。驚きと新鮮さのあるカメラワーク。私の一番好きな感じの映し方だった。

以下ネタバレ*****











ラストは、二人にとって本当に幸せなのか、疑いを残したままのハッピーエンドで終わる。禁断の愛の逃避行。
だが、エリのために死んだ男性も居た。父親と同じぐらい離れていたが、元は彼も少年だったのかもしれない。だとすればエリは、少しも成長してゆかない存在なのかも。
列車に乗ったままで終わるラストが好きだ。二人の運命がどう終わるか、描かれていないから。オスカーにとったとえ、エリが「正しきもの」であってもなくても。この愛の行末について、また想像を膨らませることが出来る。

ストーリー・・・
遊び盛りの12歳なのに、ひとりも友だちがいない少年オスカーは、初めて恋に落ちる。しかし意中のエリは、ぼさぼさの黒髪に青白い顔、いつも夜にしか姿を現さないという謎に満ちた少女だった。そんなある日、オスカーは彼女がヴァンパイアだと知り・・・

ぼくのエリ 200歳の少女@ぴあ映画生活

 

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コメント(14件)

  1. この作品、とらねこさんはきっと好きだなーって勝手に思いました!ホラーだからとか、得にこれといった理由があったわけではなく、なんとなーく。こういう作品ってアメリカでも日本でも中々作られない作品だと思いませんか?スエーデンの映画って他に何が有名だかご存知ですか??
    >>もしくは、「罪悪感」という人間らしい感情を得る前に、成長が止まったまま、魂を失った存在だったか。
    これ、面白いですね。確かにエリをどう理解するかは人それぞれですけど、これは頷けます!なるほど〜。

  2. 『ぼくのエリ 200歳の少女』 カメラの秘密

     『ぼくのエリ 200歳の少女』の原作者であり、脚本も担当したヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストは、公式サイトに短い会話を書きだした。

  3. アヤさんへ
    こちらにもコメントありがとうございます〜♪
    そうですね、私はこれとても好きでした!
    でも以前は、セリフがなく映像で凄みを出す作品は、正直何が言いたいか良く分からなくて苦手でした。
    スウェーデン映画というと、本当はイングマール・ベルイマンとか出すべきなんでしょうけど、私には『ミレニアム』だな〜!
    これ3部作でこれから日本だと2・3が公開されるんですが、今ハリウッドだとリメイクするのに、俳優を選んでいる段階ですよ。
    あとはラッセ・ハルストレムとか。私『ギルバート・グレイプ』が大好きだったんですよね。
    『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』というのも結構好きでした。
    そうなんです、エリは罪悪感をおそらくもっていない存在なのだと思います。だからこそ、怖いんですよね。
    「悩む」というのは、死すべき人間の特権なんでしょうか。

  4. 「ミレニアム」ってドラゴンタトゥーの女の映画でしたっけ?友達が観るのが辛いけど面白かったって言ってました!今度、観てみます。原作がバカ売れ中なんですけど、そういう時って映画を最初に観るべきか、本を読むべきか悩みません?笑
    あ!「ギルバート・グレイプ」ってスエーデンの監督さんだったんですか!あれ、凄く好きです。懐かしいですねぇ。今度、「スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー」も借りてみます!情報ありがとうございます、とらねこさん!

  5. アヤさんへ
    そうなんです!『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』が一部のタイトルですよ。
    日本では次に、2と3が同時公開されるんです。楽しみ!
    ギルバート・グレイプ、結構古い作品だから、アヤさん聞いたことないかな?と思ったんですが、ご存知でしたか!
    でもスウェーデンの映画って確かにあんまり思いつかないですよね。
    スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー、アヤさんがお好きなテイストの映画だといいですけど・・・
    ちょっぴり不安

  6. ぼくのエリ 200歳の少女

    怖ろしくも、哀しく、美しい12歳の初恋
    原題 LAT DEN RATTE KOMMA IN/LET THE RIGHT ONE IN
    製作年度 2008
    製作国・地域 スウェーデン
    上映時間 115分 映倫 PG12

  7. とらねこさん!観ました観ました!2と3、待ち遠しいですね!ってあれ、2はこっちで終わってしまったぁぁぁっぁぁぁぁ。DVD待ちます、、、。
    ギルバート・グレイプは母が好きな映画なので、昔観ました!良い作品ですね。
    残念な事に!スウェーディッシュ・ラブ・ストーリーが手に入らない、、、彼の他の作品は3つ見つかりましたけど、、、。また近未来、探してみます!

  8. アヤさんへ
    こちらにもありがとうございます〜♪
    おお!『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』見ましたか〜
    あ、アメリカの方が早いんですね!こっちは、3に合わせてか?ちょっと遅いんですね。
    本当羊たちの沈黙みたいに、上手にできててビックリします。
    本当似てるんですけどねー。
    ギルバート・グレイプ、お母さんが好きなんですね。いい趣味のお母さんですね!
    スウェーディッシュ・ラブ・ストーリーはもしかしたらDVDはないのかな?
    でもオススメをちゃんと見てくださり、ありがとうございますー。嬉しいです!

  9. みたで。。。よかったよ。この国には萩尾望都先生の『ポーの一族』という傑作マンガがあるので、あまり期待せずにいたのですが、、、これはヘルマン・ヘッセの『デーミアン』じゃないですか、、、

    邦題があんまりよくないですよね。「正しきものを中に入れよ」のがいいのに。。。エリが導くもので、オスカーをつれてくんだね、どこへ? 

    でも随所でちゃんとホラーしてるあたりもいいですよ。ネコにたかられるオバちゃん→後日、ベッドで炎上。。。あのラストはでっかいスクリーンで見るべきだった、、、パラノーマル・アクティビティってあんな感じだったよ(最後だけ)。

    あとふたりの隠れ場の壁に貼ってあったポスターが、クラッシュだったのも忘れられない。。。

  10. 裏山エリ@裏山アンドさんへ

    こんにちは~♪コメントありがとうございました。
    『ポーの一族』と『デーミアン』て、おっしゃる通りだなあ。
    と言ってもデーミアンの方は知らなくてググったケド。。

    邦題は確かにネタバレしちゃってますね。ああいうのってどうなんだろう。私的には、この手の物語が大好きなタイプだから、知らずに見たかった、って思うんだけど。
    人によっては、エリが何者であるかを分かった上でないと、「何この話!?」と思ってしまって、その意外性を快く思わない人もいるんじゃないかと思うんですよね。
    邦題でミスリーディングするようなタイトルは許せないんだけれど、観客って自分がそれと知らずに吸血鬼が出てきたりすると、それだけでカチンとくる人がいるんですよね。しかもそれがよくある感じのホラーでなくて、こうした作りだと余計に。だから今回の場合、配給会社が狙ってこのタイトルをつけたこと、逆に良かったんじゃないか、って思ってるんです実は。
    すごくいいタイトルの原題を全然生かせないのは、確かにもったいないけど・・。
    そうそう、『クラッシュ』は意外だった。私にはあのポスターがクラッシュである必然性は分からなかったから言及しなかった。

    本当、エリはどこに導いていくんだろう。分からなかったですよね。それが怖い。
    初めの方でエリのために死ぬ中年男が居たけど、私、少年は彼の二の舞になるんじゃないかと思ってるの。
    それでエリはずっと変わらずに生きていくんだろうな。そのループを感じさせるからこそ、あのラストが怖いのよね。

  11. >初めの方でエリのために死ぬ中年男が居たけど、私、少年は彼の二の舞になるんじゃないかと思ってるの。

    そうそう、ボクもそれ派。。。ボクはこれ、少年が大人になる話だと思った。オスカーの部屋、最初の方はミニカーとかおもちゃがいっぱい置いてある。初めてエリと会ったときに渡したのもルービックキューブ。そんなもんエリはとっとと解いちゃって、放置してある上に雪が降り積もる、、、

    エリの家にあったパズル(イースタエッグみたいなの)は対照的で、ちょっと触っただけでバラバラになって中から指輪が出てくるわけだ。パズルを解くのはただの遊びに過ぎなくて、大事なのは中身の宝物。ってことを示唆してるんだと思ったよ。

    オスカーが父親と会ってゲームしてるといやな感じの男が来て、ゲームが中断してしまう。ここでもオスカーはまだ父親とゲームで遊びたいこども。でも父親は男とお酒を飲み始める。男は片手にタバコをくゆらせている。。。

    ここで少年があの中年男の二の舞になると仮定するのなら、、、あの中年男がバーで牛乳を飲んでいたことが重要になってくる。で、後にエリたちによりほとんど壊滅されることとなる地元のおっさん&おばさんグループは、そこで昼間から(白夜か?)酒を飲み、やはりタバコをくゆらせていて、、、

    中年男は『いっしょに飲まないか』との誘いをあっさり断る。これ、たぶん、堕落した大人の典型にはまるな、という教えだと思うんだ。ヘッセのデーミアンはニーチェにも通じているのだが、まさに力への意志ですよ。人間のルールからはみ出してでも、妥協したつまらない大人になるな、せいいっぱい生きろ(他人の生き血をすすっても)。。。

    だから『エリには、苦悩や罪悪感が描かれていな』くてもいいんだよ。そんで最高にくだらない遊び=いじめに興じているクソガキどもには、天誅&家出。。。

  12. あとクラッシュのことだけど、、、

    I FOUGHT THE LAW なんじゃないのかな、、、

    AND THE LAW WON とつづくのだが。。。

    大人になるとつらいことがいっぱいあって、お酒飲んで生きていれば楽だけど、それにあえて反発して生きる = 戦う ことを選んだ中年男は、けっきょく疲れ果ててなかば自殺のようなラストを迎えたわけなのだが、、、

    だからやっぱりあのラストは怖いよね。

  13. 裏山エリ@裏山アンドさんへ

    こんばんはアゲイン!

    >初めてエリと会ったときに渡したのもルービックキューブ。そんなもんエリはとっとと解いちゃって、放置してある上に雪が降り積もる

    ルービックキューブ、もらった途端に解いてたね。私はこれ、エリはこれまでにやったことあるのだと思う。何度もね。
    頭の良さというのを表現しているというよりは、彼女が圧倒的に人より長い時間を生きていること、時間を持て余していることを感じさせるよね。ルービックキューブ、彼女は経験上で答えを知っているのだと思う。
    それは当然、彼女がゲームが得意なこと、それも彼女に必要な「サヴァイブする」というゲームに長けているのを彷彿とさせるよね。見ていると私たちには危なっかしく見えるのに。

    少年は頼りないいじめられっ子だったのに、最後には何かを守ろうとするまでに強くなったね。

    中年男が酒を飲まずに牛乳を飲んでいた、という下り、面白い見方だね。確かに世間並に、他の人達と談笑して酒をくらうなど、到底できる人種ではないのだから。

    人間のルールからはみ出していくところは、どこか爽快感を感じさせたよね。
    うん、私も、苦悩や罪悪感がないところが良かった。




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