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■20. 虹の女神

虹の女神’06年、日本
監督:熊澤尚人
製作:岩井俊二、橋田寿宏
音楽:山下宏明


市原隼人  岸田智也
上野樹里  佐藤あおい
蒼井優  佐藤かな
酒井若菜  麻倉今日子
佐々木蔵之介  樋口慎祐
相田翔子  森川千鶴
小日向文世  佐藤安二郎
鈴木亜美  久保サユミ


とっても好きな邦画の一つになったよ。
’06年の映画だけれど、当時に見なかったことを後悔。
まさか、こんなに気に入るとは思わなかったものだから。

主軸のストーリーラインは、よくある青春映画、といったテイスト。
友達で仲良くしている男を好きになり、そいつがとんでもなく鈍感な男で、恋愛にはとうとう至らず、仲の良い、ただの友人関係で終わってしまった、青春の苦い思い出・・・になるはずだった物語。

お互い不器用すぎて、「こうすればいいのに」というところで、スムーズには決していかず、スレ違ってしまう。
見ていてこちらの方が痛い思いをしたり、胸が疼くようなもどかしい思いをしたり。

光の加減がおかしかったり、映像的に技巧を凝らして、わざわざ変な撮り方をしているのが初めは気になったけれど、
私の友人は、これを、“思い出”をクローズアップするための不完全な撮り方だ、という。

私は、ラストのあおいの撮る自主制作映画に向けた何かと似たものを感じた。

ただ単に、綺麗に撮れた映画が、私たちは見たいんじゃない。
不完全でも、逆にその不完全さをこそ愛しいものとして描くような、そんなものがここに表われていたように私には思えた。
このいびつな映し方は、逆に彼らの不器用さの表れであるかのように、次第に心を打つようにすら思えてきたのだ。
インディペンデント的な勢いだとか、愛らしさ、その純粋な思い、というものを、
単に物語だけでなく、こうして映像にこそ、映し撮ってみせたのだ、と。
そこにこそ、彼らの未熟なきらめきが隠れているような気がした。

主軸のストーリー以外のところでは、みずみずしいギャグセンスがあれこれと散りばめられていて、爆笑必須。
酒井若菜の秋田弁は、『池袋ウェストゲートパーク』を思い出して、一言しゃべるたんびに可笑しくって仕方が無いし、
悲しい出来事の後の相田翔子の出番は、ありえないほどにコントとして大成功している。気づけばこのおかげで、一気にラストまで退屈を感じることなく走り抜けていくのだ。

人によっては、ここはビックリしてしまうほどのトリッキーさを見せているが故に、この部分はチョット要らない、なんて思ってしまうかもしれない。
しかし、「年上女の、年のサバよみ」という名のコントで、こんなに面白い話は普通ちょっとないよね。しかも、まさかこんな切ない青春映画にスッポリはまっているなんて、他に類を見ませんよ。
こういう役を、素にしか見えない顔でコナす相田翔子、マジですごいな。

だからこそ、蒼井優の悲しさがまた、ひときわ際立って、グッと来てしまう。
彼女が出るシーンは、どれもこれも最高に良くて、しかも上手すぎる。

ラストのシーンですら、そこにリアリティを与えるのは、彼女の演技いかんだった(「お姉ちゃんも、岸田さんも馬鹿だなあ」)。
私は思わず、ラストで「締まった!」と叫んでしまいましたよ。

以降、ネタバレですが










それにしても、モノレールの駅(あれば東京ビッグサイトとかその辺かな?)で、「付き合おう」という話を繰り出した時の、心の痛みといったら!
あおいが可哀想すぎて、思わずこの主人公に対して、本気で憎しみが沸いてきたよ・・・。
私だったら、この人を好きになったことすら、本気で後悔しかねないほど、煮えくり返ってしまいましたトサ。(主人公と同化しすぎなんだけど)

いやはや、「不器用な恋愛映画」という括り、もしくは「痛い青春映画」邦画部門の中でも、自分的になかなかのお気に入り作品になりました。

ストーリー・・・
小さな映像制作会社にようやく就職し、日々苛酷な労働を強いられている岸田智也に、友人であり会社の同僚でもあった佐藤あおいがアメリカで事故死したと知 らせが届く。大学時代、智也の失恋騒ぎをきっかけに親しくなったあおいは、映画研究会に智也を引きずり込み、監督作「THE END OF THE WORLD」に主演させたのだった。卒業後、定職に就けないでいた智也に今の仕事を世話したあおいはひとり渡米する。・・・

虹の女神/Rainbow Song@映画生活

 

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コメント(9件)

  1. 『虹の女神』いいですね〜ぇ。06年のマイ邦画№1
    つうかこの10年dふぇ一番泣けた作品です。
    最近CSで放映されてまして。あんまりテレビで映画観る習慣はないんですが…40台中盤のオヤジが号泣ですわ。
    映画に対し、それもフィルムに対しての偏愛が痛い。
    映画が好きだけど、映画を職業としなかった(勇気が無かった)観手としては切なく、切ないです。
    06年はTV局+東宝コラボ作品が大ヒット、その中で唯一こけた(TV東京だからか?)作品ですが、一番映画愛にあふれた愛おしいい作品でした。

  2. 虹の女神 Rainbow Song

     『いちばん近くにいた人が いちばん遠くに行ってしまった 失って、はじめて気づいた―大切なひと』
     コチラの「虹の女神 Rainbow Song」は、「花とアリス」の岩井俊二監督が、自身の作品以外ではじめてプロデュースした、美しくせつない感動の物語です。監督は、「親指…

  3. Longislandさんへ
    こんにちは〜♪Longislandさん、お久しぶりです!
    覚えていてくださり、ありがとうございます!
    私もLongislandさんはどうしてるかな?なんて睦月さんと一緒に話したりしていたこともあるのですよ。
    この作品、Longislandさんもお気に入りですか!嬉しい。
    私もこれ、とっても気に入ってしまいました。
    はじめは、わざとヘタに撮ったり、ああいうのが気になって気になって仕方がなかったんですが、そういうものも全てひっくるめて、
    いとおしい作品になりました。
    映画の周辺にいる、キラキラした若者を描いているところがまたいいんですよねー。
    海外行けば、って言われてその気になるところなんて、自分にはすごく分かります。
    この作品て、誰かの「いつかの自分」を描いているんじゃないか?なんて思ってしまうような、愛情にあふれた作品でしたよね!

  4. とらねこさん、こんにちは。
    留守中にコメント有難うございました。
    これ、私も好きな邦画のひとつです。
    とても素敵な雰囲気の映画ですよね。
    もうなんかぎゅっと掴まれた感じで。
    蒼井優ちゃんの「…ばかだなぁ」のところには私も本当にやられてしまいました。
    あぁまた見たくなっちゃったな。

  5. あすかさんへ
    おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
    あすかさん、日本に来てらしたんですね!
    日本のご飯は美味しいでしょう?^^
    この作品、あすかさんもお好きだったんですね。
    私はこれ、思ったよりずっとずっと心を掴まれる作品でした。
    いやあ、開けて見るまで分からないものですね。
    蒼井優ちゃんの「ばかだなあ」には、ドッと涙が溢れてしまいましたね。
    もう一度、蒼井優が見たくて、この映画見たくなりそうです。

  6. 虹の女神 Rainbow Song

    2006年11月5日(日) 20:20?? TOHOシネマズ川崎8 料金:1200円(レイトショー) パンフ:600円 虹の女神 Rainbow Song [DVD]出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメントメディア: DVD 年間に映画を100本以上見ているくせに、岩井俊二関係は、見たことが…

  7. 『虹の女神 Rainbow Song』

     この映画が公開される一週間前くらいの事だったでしょうか。僕はある夢を見ました。その夢の内容とは上野樹里と屋台で横並びになって一緒に酒を呑んでいるといったものだったのです。
     実は僕が見る夢の中に知っている人が出てくることは滅多にありません。
     だって….

  8.  こんばんは!
     不器用な恋愛映画って良いですよね〜。
     映画を観ている側からすると「オイオイそれが告白だって気がつけよ!」なんて思うわけですが、映画の登場人物はそれが気付かず話が進んでいってしまう。そんなもどかしさが良いんですよね。たまにそれが苛立ちに変わったりするのですけど(笑)
     でもそういった相手の気持ちに全く気が付かずに過ごしている時期っていうのもきっと誰もが持っているからこそこういった映画にどこか共感できるのだと思います。
     で、この映画の熊沢監督の次回作である『君に届け』って映画もチラシを観る限りこっち系の映画のような気がしますし、もし不器用恋愛映画に興味をお持ちになられたのなら次は『檸檬のころ』って映画を是非!
     おそらく顔が赤くなるような背筋のかゆくなるような恥ずかしさを体験できるかと思います(笑)

  9. 蔵六さんへ
    こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
    そうそう、なかなか気持ちが言い出せなかったり、素直に表現が出来なかったり。自分の気持ちに素直になって傷つくのが怖かったり、相手を傷つけてしまったり・・。うん、私も経験ありますYo!見ていてくぅぅぅ〜って、もどかしいんですよね〜。
    この主人公の智也みたいな人、いますよね。ちょっと鈍感で、本当はシャイで照れ屋さんなのかな。こういう子って、同い年ぐらいの等身大の女子だと、なかなか素直になって付き合うまでに至らないんですよね。相田翔子の話は、コントみたいって書きましたけど、女性に対する見る目があまりない、そして女性の気持ちもあまり理解できない人なのだ、っていうエピソードでもあったんですよね。まあ、この頃の年代にありがちではあります。
    『君に届け』も蔵六さん的に期待できそうですか^^
    『檸檬のころ』もチェックしときますね。ただ最近、貯まったDVDが恐ろしいほどたくさんあって、全然進まないんですよね。トホホ。。だいぶ先になるかもしれないのですが、頭の片隅に入れておきます♪
    あと本音はねー、純情不器用映画を見た後は、その反動でエログロ・ゲテモノ映画が見たいでっす。そっちを教えてくれたら嬉しかったかも。
    昨日、「涼しいし風流な気分になりたい」ということで、『西瓜』という映画を見始めたのですが、(半分作ってますが)
    トンデモない映画でしたよ。ちょっとギドクっぽくて。前衛的で。




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