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母なる証明 ▲170

母なる証明’09年、韓国
原題:Mother
監督・原案:ポン・ジュノ
エグゼクティブプロデューサー:ミッキー・リー
プロデューサー:ソウ・ウォシク、パク・テジョン
脚本:パク・ウンギョ、ポン・ジュノ
撮影:ホン・クンピョ
美術:リュ・ソンヒ
音楽:イ・ビョンウ


キム・ヘジャ  母親
ウォンビン  息子、トジュン
チン・グ  ジンテ(トジュンの友人)
ユン・ジェムン  ジェムン刑事


呆気に取られるオープニング。
まるで、「アナタはキム・ギドクなんですか?」と聞きたくなるような出だし。
この瞬間から、ヤバイ!と思ってしまった。(ズバリ私は、好きでしょう!〜花輪君風〜)

ちょっと、この人はどういうセンスをしてるんですかね?どこかテンションが高く、人間のリアルな姿をあぶり出すような鋭さがあるにもかかわらず、相も変わらず飄々と、マヌケ風な体裁も保っていて。
どこか頭をブン殴られたような意識に陥ったまま、映画は進む、という・・・。
今回はこれまた、ムッチャ気持ち良く殴られてみました。

母親って、こういう生き物なのかもしれないな、と思う。もちろん、ここでの母の姿は、究極なものであるにしろ。
誰が信じなくても息子を盲信し、溺愛し、
どんなに世界が有罪であると糾弾しても、無条件で絶対に、彼の無罪をひた信じる。

彼女にとって息子の姿は、生き甲斐そのもの、無くては生きられないもの・・・。
偏愛のために、母の包むような愛はいつしか、息子が彼女の「恋人」ですらあるかのように見えたりもする。
包む愛は飲み込む愛に代わってしまい、彼女の一部としていつしか生き始める・・・。

最近私が思うのは、たとえサスペンスタッチの物語でありながらも、人物像により迫った形の、ヒューマンドラマとなりえる、・・・ということ。
サスペンスという、どこか型にハマった物語が、生き生きとしたものになりえるのは、よりその人の肌の内側に踏み込んでいくことではないか、と。
人工的なサスペンスには逆に、人々の内面ではなく、むしろ状況的な事柄ばかりが強調される。その代わり、人間の本質からは外れてしまうように思う。

この作品では、「こうであるだろう」と、信じて進む物語が、途中から、「その母としての本質」がそれを裏切る形で展開をしていくのだ。そこが驚く。
サスペンスという形式、状況証拠によって裏切られるのではなく、あくまでも、
その人間としての本質によって、観客も一緒になって信じてきた物語、これが裏切られていくのだ。

圧巻なのは、ラストのところで、真実が母にもそれと分かる形で明らかになった、その後の展開だ。
ネタバレになるので、細かく言うのは避けるけれど、母の行動は、それまでの物語を全て覆していく。
それは、信じてきたものに対峙することなく、それまでの盲信をそのままの形で残すための、彼女の真実に対する“処理方法”だ。

驚くべきラストではあるけれど、そこにあるのは、人間に対する不信感や、神のような視点という傲慢さは決して無い。
ただ、悲しむべき人間を、愛すべき人間を、等身大に見つめていく力量。
どこかもの哀しくはあるけれど、圧倒的で途方もない物語を、
驚くべき力で見事に描ききった。素晴らしい傑作だった!

人の本能が原生林のようなものであるとしたら、まさに採伐されないままの姿で「ハイ、ドウゾ」と出来上がったスゴイ作品。
それなのに飄々とした顔して、ホントに憎いヤツ、ポン・ジュノの作風は!

ストーリー・・・
凄惨な殺人事件の容疑者として一人の青年が逮捕される。彼の母親は物静かな息子の無実を信じるが、それを証明することができない。警察も弁護士も頼ることができなくなった母親は、自ら真犯人探しに乗り出す・・・

母なる証明@映画生活

 

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コメント(13件)

  1. 「とある母親の物語」で始まった映画が、あのバスを外から撮ったシーンで「全ての母親の物語」に変化した演出は見事でした。
    さすがポン・ジュノ監督!でしたよ。

  2. 『母なる証明』

    母の愛は時に真実を歪めてしまう。いや真実が何であるのかさえ分からなくさせてしまう。そして何が真実であってもその愛の深さで全てを消し去ってしまう。そんな恐ろしさをまざまざと感じる映画でした。
    やはりポン・ジュノ監督の緊張感ある演出は凄いです。そしてブラック….

  3. 「母なる証明」

    この力は国民性か、はたまた・・・。冒頭、主役の「母」が野原の真ん中で踊り始める展開にまず圧倒された。これは何を表しているんだ?「スペル」のばーさんとは方向性が違うが、この母の持つインパクトはすごい。しかし本作に当初抱いていた印象とどうも違うことが時間を経….

  4. にゃむばななさんへ
    おはようございます〜♪コメントありがとうございました!
    あの光の当たり方とか忘れられないですよね〜

  5. ネタバレ「母なる証明」 脚本(原案)読んで解った事!

    完全ネタバレしているので、未見の方は要注意です!!

  6. とらねこさ〜ん、少しお久しぶりです^^
    私もこの映画、割と最近見て来た処なんです。
    予想以上にグワグワ来ちゃいました。
    キム・ギドク臭?とでもいいましょうか・・・そういう感じありましたねー。
    私はこの映画を見ながら、「ゆれる」の西川美和監督のことを、なぜか頭に思い浮かんだりしました。

  7. latifaさんへ
    おはようございます〜♪latifaさんすっごくお久しぶりです〜!嬉しいです!コメントありがとうございました。
    私も予想以上でして、ホント凄かったなあ。かなり気に入りました。
    技巧を凝らすのではなくて、想像の少し外をいく辺りがギドクっぽいかな、なんて思いました。ええもちろん私好みでした!
    西川監督を思い出したんですか。ふむ、なるほどー。それは考えなかったのですが、何となくしっくり来ますね!うん。

  8. こちらにも♪
    ポンジュノ映画の見所といえば唐突に繰り出される飛び蹴りですが(笑)
    プロット聞いて、てっきり母は強しバトル突入からヘジャ・キックが炸裂するんだろーなと予想してたんですよね
    その画ヅラはちょっと見ものだなーと
    そしたらよもやのダンス映画だったとは!
    オープニングで早くもしてやられますね
    やぱし一筋縄ではいかないですわ
    ジュノ…怖ろしい子…!!(笑)
    そして鈍器界にまた凶悪なニューカマーが…
    その名はパイプレンチ!
    「韓国映画ココがスゴイ!」て何?て聞かれたら
    鈍器のバリエーションて答えますわー(笑)

  9. みさま
    こちらにもコメントありがとうございます〜♪今回、コメ返しが遅れてしまいましたが、今後はこういったことがないようにいたしますので、今後もどうぞ宜しくお願いしますです!
    よもやのダンス映画!まさしくまさしく。
    オープニングのやられた感じ、もう大好きでした。ラストのあの光の当たり方、バスの中のあのシュールな雰囲気も。
    >ポンジュノ映画の見所といえば唐突に繰り出される飛び蹴りですが(笑)
    確かに!でも、飛び蹴りを今か今かと待っていたのでしょうね、みさんはきっとw。
    私としては、あの葬式で母親乱入の場面から、飛び蹴りが繰り出されたらいいのに・・・って思ったりして。でもそれをやったら、むしろ『グエムル』の怪獣に母親が似てしまいますかね。アッハッハ!
    ま、真面目な話、あのシークエンスはちょっとだけ『シークレット・サンシャイン』も思い出しちゃった。
    >鈍器のバリエーション
    ドンドンドン、鈍器〜♪
    ってそう言えばみさま、『チェイサー』の時に歌ってらしたっけね。ケッケッケ♪
    本当、どうしてこう凶器でないものを凶器として使われると、「ひいいいい!」と恐ろしい気持ちになるんでしょう。こえええよ、韓国。
    あーそうそう、また年末年始辺りにみさんと飲みたいですね。今年の締めもしくは来年の新年会で。
    ご都合がつけば是非!

  10. 今年初めての映画がこれでした!
    皆様の評価が高いので、私はポン・ジュノ監督と相性がよくないのですが観てきました。(キム・ギドクは好き)
    やはり韓国映画そのものでしたが、切り口やストーリー展開がこの監督独特のものでしたね。
    ただ、この母と息子の関係はやはり特殊だと思います。彼は知的障害者ですから母にとって特別な存在(一心同体?)なのではないでしょうか?
    私も母親ですが理解できない感情がありました。
    韓国の国民性を(数度訪韓)少し理解しているのでなるほどと納得できるところもありましたが・・。
    いい意味でも悪い意味でも濃い映画でした!

  11. cinema_さんへ
    こんばんは〜♪明けましておめでとうございます!
    おお、今年初の映画がこちらだったのですね。
    なるほど!確かに、これブロガーさんの評価が結構高い作品でしたよね。
    cinema_61さん同様、私も実はポン・ジュノの、掴みどころのない笑いのセンスなんかが、どうも苦手だったんですが、この作品で完全にやられてしまったというか(笑)
    >ただ、この母と息子の関係はやはり特殊だと思います。彼は知的障害者ですから母にとって特別な存在(一心同体?)なのではないでしょうか?
    そうだと思います。さらに、息子の脳に障害を残してしまう原因を作ってしまったのも、彼女自身だったんですよね。ということは、息子という存在は余計に、彼女にとっての「自分の一部」となってしまったのではないか、と思います。
    確かに濃い映画でしたね(笑)

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