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アンドレイ・ルブリョフ ▲51

アンドレイ・ブルリョフ’66年、ソ連
監督: アンドレイ・タルコフスキー
脚本: タルコフスキー、コンチャロフスキー



ストーリー・・・
15世紀のロシア最大のイコン(聖像)画家と称される、アンドレイ・ルブリョフの生涯の一部を描いた物語。

修道士でもあり、後に偉大とされるロシア正教徒の「至聖三体」を描く、ルブリョフの前史の話だ。
Wikipediaを見ると、アンドレイ・ルブリョフの生きた時代は、1360年頃〜1430年とされている。だが、この物語は1400年から始まり、1423頃で終わる。ルブリョフが画家として後世に名を残すのは、これ以降の話なのだ。

画家でもあり、修道士でもあるルブリョフの、人生の一時期を描いた作品であるが、むしろ長い歴史大作のような手ごたえがある。考えていたようなタルコフスキー“らしさ”というイメージとはちょっと違っている。実在の人物を描いたが故なのかもしれない。

第一部と第二部に分かれ、さらに章ごとに分かれたそれぞれのシーンが、それぞれ独立した別の絵を見ているかのよう。長い時間軸を捉えるのに、物語を冗長に語るのではなくて、象徴的なシーンを切り取りそれを絵にするかのような印象が残る。

一つひとつの章が圧倒的なパワーを持って迫り来るよう。この時代のロシアに生きた人物の気持ちをリアルに感じ取れる。
だがただ一人の人生ではなく、ロシア史そのものを見ているような感もあり、同時に類稀な一人の修道士の高潔な生き方を描いたようでもあり・・・。また一方では、芸術に対するタルコフスキー自身の思いも見てとれるようでもある。

退屈な映画だと思うことなかれ。
これは、ある種の感覚に頼って見る類の映画ではないかもしれない。見ている時は、この一章が次の一章にどのように続くのだろう、と考えるけれど、見終わった後に、それぞれのエピソードが勝手に自分の中で繋がり出す。そしていつの間にか、初めこそ独立して見えたそれぞれの各章が、気づけば意味を成す一編となって、一人の高潔な芸術家の姿が大きく浮かび上がってくる。

最後の章の鐘の鋳造職人、ボリースカ(ニコライ・ブルリャーエフ)のエピソードが印象深い。
一人の白痴の少女を助けるために、タタール人が自分と同じロシア人を殺すのを黙殺してしまったルブリョフだった。彼は絵筆を断つことを決心し、無言の行を何年も続ける。言葉も忘れてしまったような一介の僧として過ごす。
ボリースカは、鐘の鋳造職人であった父親が、息子である自分だけに鋳造の秘密を教えてくれたと言ってその職を手にし、鐘は立派に出来上がり、完成してその音を響かせる。鐘の音を聞きながら、「本当は父親は自分に教えてくれなかった」と泣くのだった。子供に戻って泣きじゃくる少年を慰めながら、もう一度絵筆を取ることを決心するルブリョフ。

この作品は、タルコフスキーの芸術至上主義論として頭でっかちに見ると、面白さがぐっと半減してしまう。むしろ、物語のダイナミズムや、映像美を素直に楽しもうとした方が、ずっと面白いし、心に残る。
お金をかけて撮影したのだろうと思われる、数々の映像。歴史大作らしく、迫力満点だ。映画館で見れて、至上の悦びを感じた!

・アンドレイ・ルブリョフ@映画生活

 

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コメント(3件)

  1. アンドレイ・タルコフスキー「アンドレイ・ルブリョフ」

    アンドレイ・ルブリョフアイ・ヴィー・シーこのアイテムの詳細を見る
    監督:アンドレイ・タルコフスキー
    脚本:アンドレイ・タルコフスキー、
       アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー
    音楽:ヴァチェスラフ・オフチンニコフ 
    出演:アナトリー・ソロニーツィ…

  2. こんにちは^^
    >この作品は、タルコフスキーの芸術至上主義論として頭でっかちに見ると、面白さがぐっと半減してしまう。
    そうそう。芸術家を通してロシアとはなにか?
    というような普遍的ななにかをすくい上げようとした大胆な作品なのだと思います。
    タタール人の攻勢やらのドタバタを存分に味わうとよいのだと思います。
    あれ?劇場で観たんですね。何処でやってたのかなあ??ワタシも最初は劇場鑑賞でしたが、その時は寝たんですよね〜例によって

  3. manimaniさんへ
    こんにちは!コメントありがとうございます。
    manimaniさん、私ね。一人の人間にとって芸術とはどうあるべきものか、神とは何か、人間とは何かを模索して、結果一旦全てを捨て、何も描く気をなくし・・そんな芸術家が、もう一度描こうとするまでの姿を描いた物語、って一言に集約されると思うんですよ。
    素晴らしい聖人の物語ではなく、その聖人が人間の姿で思い悩む姿。ここから素晴らしい偉人の物語は始まるのだけれど、ここに描かれているのは決して聖人ではない、っていう・・。
    だからこそ面白く見れたんですよね。
    タタール人の略奪の際に、ルブリョフが取った行動はとてもショックでしたよ。
    ドタバタを存分に味わうって気分じゃなかったかも。
    文芸坐で一日だけやってました。もう私あそこが大好きかも!




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