rss twitter fb hatena gplus

*

でんきくらげ ▲31

でんきくらげパッケージや、扱われ方は“風俗モノ”だけれど、むしろ“人間ドラマ”と言うべき傑作!
今回の増村特集、かなり通ったけど、これもまた増村作品の中で、忘れてはいけない傑作の一つだった。すっごく愛らしい作品。



ストーリー・・・
由美(渥美マリ)は十九才の洋裁学校へ通う平凡な娘だった。女手一つで育てあげた母親のトミ(根岸明美)にとって、由美は何ものにもかえがたい宝であった。だが、長年水商売を渡り歩いて来たトミは男っ気がとぎれたときがほとんどなかった。吉村(玉川良一)もそんなトミの何人目かの男だったが、吉村は由美の見事な身体に食指を動かし、ある晩由美を犯した。帰宅したトミは興奮のあまり、吉村を包丁で刺殺した。刑務所へ入った母親のもとへ由美はせっせと通うのだった・・・

’70年、増村保造監督・脚本作品。

初めは、これもまた最下層の生活を送る人間模様なのか、と思いきや・・・
どんな境遇に合ってもメゲることなく、したたかに生きる一人のヒロインの成長物語だった。
痛快なのは、堕落しがちな環境にあっても、決して“本当には堕ちてはゆかない”ところ。
これ以上ないぐらいドン底から這い上がって、どんどん出世してゆく。

殺人犯となった母親の、多額の借金を返すために、場末の“お触りバー”で働き始めるし、銀座のホステスになった後、金のために男と寝るし、更には金持ちの老人の妾として囲われる。
それなのに、決して汚れないヒロインの姿が、次第に清々しくすら感じ始める。

どんな状況下にあっても、気づけば自分の思い通りに男達を動かしている。上手に利用するといっても、騙している訳では決してない。
不思議に汚れることがなく、魅力に溢れていて、むしろ物語が進むにつれ、どんどん魅力を増してゆく、・・・そんなヒロインの描き方が圧巻だ。

逆説の美学と言うか、不思議なほど明るいテイストで、天晴れなほどに見事にまっすぐに立つ背中が頼もしい。
それは、どんな逆境にあっても、自分を卑下したり、蔑んで自暴自棄になったりしないから。

母に面会に行く度に、素直に今の状況を告げる主人公。
本当であれば、自分とは正反対の道を歩くことを娘に望んだ母のトキは、ある時は自分と同じバーで働き始めたことを本気で悲しみ、銀座のホステスに成り上がった時は誇らしく感じ、妾になった時は「自分はいろんな男を愛したが、金のために老人に身を売ったことなどなかった」、と本気で落胆する。

あっけらかんと自分の身を変えていき、その度にドンドン綺麗になっていく主人公は、母には嘘を告げたり、隠し事をしたりしない事に気づく。
面会の度に自分の身の回りの環境が変わっていき、それをバカ正直に告げる主人公を、だんだん可笑しく感じてくる頃には、もうこの作品のマジックにかかっている。

彼女が芯がまっすぐなのは、自分を信じることが出来るからだし、自分の母を心から愛することが出来るから。誰かを愛することが出来る、まっすぐな心が残っているからだ。
「金のため」なんて言ったら、さぞかし聞こえが悪く思えるだろうと思うのに、
「愛情いっぱいに、お母さんに育てられたから。」と堂々と胸を張る姿が、とても心を打つ。
やけにならず、明日を信じることの出来る主人公が、どこか眩しい。

全体的には明るく描かれ、行間から滲み出るポジティブさには、全くわざとらしさを感じない。見事な作品だった。

でんきくらげ@映画生活

 

関連記事

『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義

80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む

『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの

一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む

『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究

去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む

『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン

心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む

1,695

コメント(3件)

  1. 同じ時期の「遊び」はあんましだったのかな?と記事を読んで思ったのですが、
    コレは高評価ですね!わー
    わたしもコレと「しびれくらげ」は好きでイイと思うんです!(「しびれ」の方がもっと好き!)
    「遊び」は同じような展開かなと思いきや犯されなかったのですが、
    渥美マリはホントまっすぐでしっかりしたたくましい女性像でカッコイイです。

  2. 今日のDVDレンタルは渥美マリもんを中心に

    今日こそ、渥美マリもんのDVDを借りよ〜とツタヤに
    あれ?、もう出てたんだっけ、「レミーのおいしいレストラン」http://blog.goo.ne.jp/tagomago1021/e/8440891f3abdb5d1e115290bedd37dce、さ、さ、ダビング、ダビング(死語)
    渥美マリは〜
    軟体動物シリーズね

  3. アンバーさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    え、『遊び』も面白かったですよ!完成度高い作品でしたよね!
    アンバーさんは、『しびれくらげ』の方が好きなんですね。へえ〜。
    私は、これかなりの傑作だと思ったんですが、それの上を行くなんてすごい。
    この増村特集では、最初に昔の予告が、まんま流れていたのですが、
    その時に『しびれくらげ』の予告も見ました。
    機会があったら是非見てみたいです^^
    そうですね、初めの方は『遊び』とちょっと似てるかな、と思いましたよね。
    渥美マリ、この作品で見ると、最高に素敵でしたよね!
    あっけらかんとしてるけど、まっすぐなところが感じられて清々しかったです




管理人にのみ公開されます

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)


スパム対策をしています。コメント出来ない方は、こちらよりお知らせください。
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...

【シリーズ秘湯】乳頭温泉郷 鶴の湯温泉に泊まってきた【混浴】

数ある名湯の中でも、特別エロい名前の温泉と言えばこれでしょう。 乳頭温...

2016年12月の評価別INDEX

年始に久しぶりに実家に帰ったんですが、やはり自分の家族は気を使わなくて...

とらねこのオレアカデミー賞 2016

10執念…ならぬ10周年を迎えて、さすがに息切れしてきました。 まあ今...

2016年11月の評価別INDEX & 【石巻ラプラスレポート】

仕事が忙しくなったためもあり、ブログを書く気力が若干減ってきたせいもあ...

→もっと見る

【あ行】【か行】【さ行】【た行】 【な行】
【は行】【ま行】【や行】 【ら行】【わ行】
【英数字】


  • ピエル(P)・パオロ(P)・パゾリーニ(P)ってどんだけPやねん

PAGE TOP ↑