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116●ノスタルジア

ノスタルジア’83年イタリア
監督:アンドレイ・タルコフスキー
脚本:アンドレイ・タルコスキー、トニーノ・グエッラ
出演:オレグ・ヤンコフスキー、エルランド・ヨセフソン、デリア・ボッカルド、ドミツィアーナ・ジョルダ




ストーリー・・・
18世紀にイタリアを放浪し、故国ロシアに帰れば奴隷になると知りながら帰国し自殺した音楽家サスノフスキーの足跡を辿って旅する、ロシアの詩人アンドレイと通訳の女エウジェニア。ロシア人が国外に出ると必ず襲い掛かるという病「ノスタルジー」をテーマに、タルコフスキーの詩的宇宙がイタリアを舞台に展開する。(シネマヴェーラ説明より)


死を間近にした男が、異国の地で、もう帰ることのできない故郷を思う・・・。
タルコフスキーがロシア国外を出て、イタリアで初めて撮った作品。ロシアで撮った最後の作品に『ストーカー』があって、その4年後にこの作品が来るのですね。


映像自体がもう圧倒的で、全く言葉も出て来ない。
という感覚は、こういうものを言うんだなあと、つくづく思った。これを映画館で見ることが出来て、無上の幸福感を味わうことが出来た。
映画ってやっぱり、脚本じゃないんですね。映像なんだ、それが全てなんだ、と。もうなんて言うか本当に凄いものを見たという思いがフツフツと湧いてしまってどうしようもなかった。


死に至る病、という言葉、これが全体を蔓延する感情として覆っている映像といってもいいのかな。「1+1=1」と言う言葉、その1の中にどれほどのものがあるんだろう、と考えたら、全世界を見渡せばそれは1なのだって思ったり。「すべての芸術は訳することは出来ない、その国境をなくせばいい」という文に繋がってくる言葉のように感じて、いや言葉ではなくて映像なのだと。言葉で説明してしまうのがもどかしいのだけれど、ここでは言葉ではなくてその映像が説明になっているんだと分かる。宇宙が回り始める。

姿かたちを変えて存在する水、蒸気、滴り・・・。
ロウソクに火をつけて広場を渡りきることが出来たら、世界はまだ救われる、という“狂人”ドミニコの理論をアンドレイが実践する頃、ドミニコは歓喜の歌を流しながら、説教の最中に火を放って焼身自殺をしていた。
アンドレイが思い出すあばらや、緑の山、馬、湖・・・そこに“思い”がある。自分の中でもそれが生まれてしまったようだ。これを見てしまった自分もきっと、死ぬ間際にこの映像を思い出してしまうだろう、そんな圧倒的なものを見てしまった。
ユングで言えば集合的無意識だ、これは、この映像は。ノスタルジアという思いは単に懐かしさを感じるものではなくて、全人間の無意識の扉に通じるその世界にあるような。


脚本に収まりきらない映像世界を堪能できた。没頭する宇宙!ああ、言葉にならない。

ノスタルジア@映画生活

 

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コメント(13件)

  1. 「ノスタルジア」アンドレイ・タルコフスキー(再観)

    ノスタルジアパイオニアLDCこのアイテムの詳細を見る
    再観?再々観?再々再観?再々再々観?
    どおでもいいか・・
    前回のときの記事とほぼ同じ感想を抱いた自分に驚く。
    知らないうちにときどきこの映画について考えているのかもしれない。
    ***
    今回は、救済の儀式が二人…

  2. アンドレイ・タルコフスキー監督映画と、1986年死去新聞記事

    私がアンドレイ・タルコフスキー監督の映画に出会ったのは、たぶん1983年くらいだっただろうか・・・。
    「鏡」を見に行きました。
    見の..

  3. とらねこさん、こんにちは!
    私はタルコフスキー監督のファンです(^O^)
    ノスタルジアはビデオ・脚本載ってる本を持っておりやんす♪
    そうなんですよね〜。映像で圧倒するというか、芸術というかホント凄いですよね〜。
    私は正直この映画の内容を全部把握出来てないかもしれないんですけれど、映像で鳥肌立ちました。

  4. latifaさんへ
    こんにちは〜♪latifaさん、お久しぶりです〜!
    ご無沙汰しております♪来てくださり、嬉しいです!ありがとうございます。
    おお、この作品の脚本もビデオもお持ちとは!latifaさんさすがですね、素敵
    いやもうおっしゃる通り、この世界にドップリ入り込んじゃうんですよね、
    理解とか共感とか、ストーリーとかどうだっていいですよね!
    本当、鳥肌が立ちました

  5. *ノスタルジア*

    {{{     ***STORY***                1983年  イタリア=ソ連
    イタリア中部のトスカーナ地方。詩人のアンドレイ・ゴルチャコフ(オレーグ・ヤンコフスキー)は、通訳のエウジェニア(ドミツィアーナ・ジョルダーノ)と共にモスクワからこの地…

  6. こういう作品見ている人、少ないですよね。
    嬉しいです。
    タルコフスキー独特の詩的宇宙は”水と、光と、霧と、闇と、火”と言われています。
    まさにそのとおり。
    今見てもこの美しさには胸がときめきます。最近劇場でご覧になったのですか?私は80年代に(笑)見ましたが・・

  7. ウワーー!
    やっぱりタルコフスキーはスクリーンで見るべき……ですね。
    ビデオで見てたので怠ってしまいました。
    『ストーカー』、『鏡』もそうですが、
    一度スクリーンで見た『サクリファイス』ももう一度見たいですね。

  8. 3回くらい劇場で観ましたが、
    毎回ウトウトしてしまう強力な作品です。
    自宅DVD鑑賞ですらウトウトしてしまうという(笑)
    好きな映画は見ていて気持ちがよくなってウトウトになってしまうんですよね〜ワタシ

  9. Cartoucheさんへ
    こちらにもコメントありがとうございました!
    >タルコフスキー独特の詩的宇宙は”水と、光と、霧と、闇と、火”
    おお、やはりそうでしたか!特別な使い方をしていますね。
    水が水蒸気に煙り立ち上る姿は、思わず頭がくらくらしてきました。なぜこんなに気持ちが良かったんでしょう。
    Cartoucheさんは、これ’80年代にご覧になったのですね!私は年代的に、’80年代ではチト無理でした。小学校低学年〜中学生、あ、でも高校にもカブってます。

  10. じょ〜いさんへ
    こんばんは〜♪今更ですが、初めまして!
    コメントありがとうございます★
    じょ〜いさんも、タルコフスキーはとっくにご覧になっていたのですね!
    本当、この監督って、映画館で見るのと家で見るのとは、きっと数段に違いがあるんじゃないかな、って思ってしまいます。
    『鏡』『サクリファイス』もご覧になっていたのですね〜。
    私は明日『ストーカー』をUP予定です。

  11. manimaniさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    タルコフスキーを見ていると眠くなるってよく聞きますよね。
    確かに誘ってる感じはありますね。
    心理の奥底まで、意識レベルを低下していくような、そういう映像なんじゃないかと思います。
    私に言わせれば、そこが集合的無意識の入り口なんじゃないかと。
    無意識に訴えかけられるが故に、眠くなるのでしょうね。
    でもそうじゃなくてもmanimaniさん、映画見ているとよく眠くなるーっておっしゃってますね(笑)

  12. こんばんは♪
    数年前にイメフォでやってたタルコフスキー映画祭では本作のメイキングドキュメンタリー『in「ノスタルジア」』も上映されたのですが、コレがまたメチャクチャ面白いのです
    監督の夢想したビジョンを具現化していくスタッフの仕事っぷりは一見の価値あり!
    キャストへのインタビューを通じて垣間見えるタルコフスキー節も随分と作品理解の一助となりました
    >集合的無意識
    なるほど〜!
    「郷愁」の向かう先が単なる地理空間的な故郷や時間的な過去ってんでなく、もっと普遍的なものの気がするな〜思てたんですが、その概念持ってくるとしっくりきますね
    などとえらそーなことを言っておきながらタルコフスキーは鬼門なんですよねー
    睡眠誘発効果高すぎ!水音ヤバイです…(笑)

  13. みさま
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    おー!みさまは、メイキングドキュメンタリーまでご覧になったのですね!
    この作品がどんな風に出来上がっていくか、その工程なんて面白そうですね!
    私も次に機会があったら是非とも見に行きたいです!
    映画のメイキングで一番好きなのは今のところ『牛頭』なんですけど・・・
    >集合的無意識に訴えかけるのがノスタルジー
    みさま、さすが、サブカルマスターなだけじゃなく、心理学もお詳しいだけあって・・
    正直、これ書いても誰にも分かってもらえないだろうなー、と思いながら書いたんですよ!
    タルコフスキーはよく眠くなるって言いますもんね。
    でも私はちなみに、『ストーカー』では一瞬も眠り
    ませんでした!




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