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79●ミスト

ミスト原作の『霧』は、スティーブン・キングの短・中篇の中でも傑作の部類に入る作品。
だけど、まさか映画化されるとは!私は少なくても、フランク・ダラボンがこれを選ぶとは思ってなかったのでした。



ストーリー・・・
激しい嵐が街を襲った翌日、湖の向こう岸に不穏な霧が発生していた。デイヴィッド(トーマス・ジェーン)は不安に駆られながら、息子のビリー(ネイサン・ギャンブル)を連れ、隣人の弁護士ノートンと(アンドレ・ブラウアー)街へ買い出しに向かう。3人がスーパーマーケットに入ろうとすると、店内は大混乱。外では軍人が歩き回り、サイレンが鳴り続ける。すると、ひとりの中年男が叫びながら駈け込んで来た。「霧の中に何かがいる!」と。店外を見ると深い霧が駐車場を覆っていた・・・

’07年、アメリカ。
監督・脚本・製作総指揮、フランク・ダラボン。

『ショーシャンクの空に』は、それほど映画好きというほどでもない人にも、名の知れた傑作。
私は、口を酸っぱく何度も言ってしまうんだけれど、映画化されるよりずっと前からこの原作(『塀の中のリタ・ヘイワース』)が大好きだったの。
それなのに、中には、「えーあれってスティーブン・キングが原作だったの?」
なんて言う人が居て、んもーファンとしてはもんどり打ってしまいます。

そんな風に、今となっては、名作に数えられる『ショーシャンクの空に』。
ついでに『グリーン・マイル』も、評判はまあまあ。(正直それほど素晴らしいとは私には思えないけど、原作は本当に面白い!)
それと言うのも、フランク・ダラボンがなかなかに素晴らしかったというのはキングファンでも否めないところ。

だから余計、楽しみだったんですよ!私は!
この、思いクソB級ホラーな作品を、一体あの“感動メイカー”、フランク・ダラボンがどう料理するのかな、ってだって、設定はイヤというほどB級ですよ!それは変えられないはずだからね。

それをキングならでは!の力技で、単なるB級ホラーに終わらない、一級の輝きにキュッキュと磨き上げられた作品。
その原作の良さを、きちんと分かった上での作りになっているところに、まず喜びましたよ、私は!!

本当に怖いのは人間。
それから、盲信。
狂信的な人間。
神が人を罰する、とまるで待っていたかのような言動を取り始め、
途端に神がかって、新興宗教の教祖になって説教をし始める。
そんなMrsカーモデイ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)が心底怖かった。

それから、そんな彼女の煽り文句を疑わず、目の前で起きていることの信憑性を検証しようとすらせずに、
一夜にして祀り上げられた“教祖さま”の言葉を、純粋に信じる集団が、本当に怖い。
一人の熱っぽい説教は、詳しく検分してみれば、その言質は異教的であるにもかかわらず、
ちょっとしたキッカケと恐怖心に、“黙示録的な啓示”が与えられた時、
それはある一部の熱狂的に神を信じる人びとを返って喜ばせる結果にさえなっている。
罰を与える神、それは、人知を超えた力である部分を畏怖し、
恐怖であるが故にそれを崇めるという、極限状況に置かれた宗教倫理を鋭く描いた一場面となっていて、実に見事だ。

その混乱の最中に、むしろ戦うより何かにすがろうとする人間心理、これが実は怖ろしいカルト集団を形成することがあるかもしれない。
そうした危険性を孕んだ宗教倫理は、通常であれば真面目に日曜日に教会に行くような敬虔な信者が、全く持っていないとは言い切れない。
そんな「B級ホラーな突飛な状況」に追いやられたら、誰だってパニックに陥るかもしれないのだ。

スーパーマーケットの中なんていう、小さい集団の人間たち、というこの設定も、
本来であればB級この上ない設定に違いないのに・・・。
まるで、最小公約数で行われた心理学実験のように、人間たちの心理の変わっていく様、
これらをつぶさに観察するかのように、この映画をご覧になれば、知的に面白い作品だ。

(そしてそれは、原作の良さそのものでもある。)

それから、そうした中に突然挟まれる、B級ホラーな、不気味な化物の存在。
これがまた、ちゃんとB級で、怖いんだけど馬鹿馬鹿しくて、最高だ!

きっとみんな、あのクリーチャーの姿を見た瞬間、絶句したと思う。
せっかく面白く見ていた人も、場内に突如として、冷たい空気が走るのを感じると思う。

だがここで、キングファン(ホラーファンも?)は大喜びするんだな!ワッハッハ!
「ちゃんとキングしてるじゃーん」と。ウヒョー♪
『ショーシャンクの空に』、『グリーンマイル』のフランク・ダラボン監督、なんていう冠はちょっとマズイんじゃない?と心配にすらなってしまったよ!
だけどキングなんだから仕方ないじゃんか。
『グリーンマイル』だって、ボエーって蝿を吐いてたし。
『スタンド・バイ・ミー』だって、男の大事な部分をヒルが吸うなんて、そこホラーだったんだぜ!

ただ、ラストは原作とまるっきり違っていて、グハアアッッ!となった。
「衝撃のラスト」なんて無くたって十分面白かったのに、とは思う。

ミスト@映画生活

 

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コメント(51件)

  1. ミスト

    霧(ミスト)の中には“何”が待っていたのか──映画史上かつてない、震撼のラスト15分 




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