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30●潜水服は蝶の夢を見る

潜水服’08年ゴールデン・グローブ賞、監督賞・外国語映画賞おめでと〜!
それと、マチュー・アマルリックのセザール賞、主演男優賞受賞もその他、セザール賞編集賞受賞、他、アカデミー賞も主要7部門ノミネート。



ストーリー・・・
病院のベッドで目を開けたジャン=ドー(マチュー・アマルリック)は、自分が何週間も昏睡状態だった事を知る。そして身体がまったく動かず、唯一動かすことができるのは左目だけだという事も。ジャン=ドーは雑誌「ELLE」の編集者で、三人の子どもの父親だった。彼は言語療法士、アンリエット(マリー=ジョゼ・クローズ)、理学療法士、マリー・ロペス(パトリック・シェネ)の導きにより、目のまばたきによって意思を伝える事を学ぶ。やがて彼はそのまばたきで自伝を書き始めた。その時、彼の記憶と想像力は、動かない体から蝶のように飛び立った。・・・

’07年、アメリカ・フランス。『バスキア』、『夜になるまえに』のジュリアン・シュナーベル監督。
原作、ジャン=ドミニク・ボビー 「潜水服は蝶の夢を見る」自伝

もともと自身が画家であるジュリアン・シュナーベル監督、『夜になるまえに』のDVDの特典では、アトリエと、自分の作品に携わっている映像も披露していたっけ。
であるだけに、映像表現が本当に素晴らしいの。
心理表現としても、落ち着いた確かな手腕で魅せる。
数々の賞を受賞するのも納得。

雑誌『ELLE』の編集長として、順風満帆な人生を送っていたジャン=ドミニク・ボビー(略されて、“ジャン・ドー”と呼ばれている)。
ロックト・イン・シンドローム、(閉じ込め症候群)、つまり植物人間状態ではなくて、意識があるのに体を動かせないという状態に。
『海を飛ぶ夢』のような物語なのかな、と予告を見た時に思っていたのだけれど、そうではなくて、もっともっと苛酷な状態なのよね・・・。
夜になるまえに』のハビエル・バルデムが主演を演じたという『海を飛ぶ夢』を連想していたというのもある一方、
話は変わるけど、この主人公が当初ジョニー・デップの名が挙がっていて、彼自身この役を熱望していた、と聞いた。海賊〜の方が忙しくて、実現ならず、だったのだけれど、そういえば『夜になるまえに』でもチョイ役として登場していたし、決して冗談半分の話じゃなく、ありえる話だったかもしれない、なんて思う。

だけど、このマチュー・アマルリックを見てしまったら、その可能性はすでに、全く考えられないものになってしまった。
あまりにも素晴らしくて・・・。

生き生きと動けていた時代のジャン・ドー、生命力に満ちていて、ヤリ手で、美しいその姿と、こうして動けなくなってしまって潜水服に閉じ込められた姿とを比べると、あまりにも辛い。
その辛いという表現に対しても、この映像では、納得のいく丹念な表現の仕方で、メロドラマティックでない分、没頭できるものだった。

物語冒頭で出てくる、“ニジンスキー、最後の跳躍”。
これには、心を奪われてしまった。
精神を病んで入院したニジンスキーが、死ぬ前に3mの大きな跳躍を見せた、というのは有名なエピソードだったのだけれど、それがこの同じ病院だったとは!
映像としてそれを垣間見せてくれたのにもなんだか感動が胸がいっぱいになる。

そうか、この物語も「ジャン・ドーの最後の跳躍なのだな」、という自然な伏線になっているのだった。
天才だったニジンスキーの後年の不幸な人生を、思わず思い浮かべる・・・。
飛翔すべきその翼を奪われ、飛べなくなったニジンスキーと、自然にジャン・ドーの人生とが、重なってくる。
それから、想像の羽根と、蝶という言葉が自分の中で結びついてくる。この物語が半ば成功した、と確信した瞬間だった。

大好きな瞬間でいっぱいだ。
偉人として大仰に描かれているわけではなくて、人間らしいところも好き。
家族への思い、妻への正直な思い、恋人への思い・・・。
そして、父親との関わり合い。

最後に会った時のヒゲを剃るシーンが好きだ。
言うべきことを忘れてしまう年老いた父親、その彼のさりげなく見せる愛情には胸がいっぱいになる。
電話のシーンでは、涙が止まらなくなってしまった。

だが泣き顔を見せないジャン=ドー、彼の決心は強いのだ。

何より、好きだったのは、ジャン=ドー自身の言葉、と思われる美しい文章だ。
バルザックやモンテ・クリスト伯、私の大好きな文学が、彼の最期の時にこうして出てくるところも嬉しい。

20万回の左目の瞬きだけで綴った自伝、絶対に読もう!と思って席を立った。
不思議と心地よい後味もお気に入り。

 

潜水服は蝶の夢を見る@映画生活

 

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コメント(63件)

  1. 「潜水服は蝶の夢を見る」 静かなる闘い

    この映画は難病を題材にしている映画ですが、最近の日本の映画の難病もののように泣け

  2. とらねこさん、こんばんわ〜
    私も父親のひげを剃るシーンがすごく好きです。
    よぼよぼになっても、エロじじいぶりを自慢しているところがなんだか微笑ましいですよね。

  3. ノルウェーまだ〜むさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    父親の鬚を剃るシーン、あそこは良かったですよね。
    さりげない中に、すごく愛情を感じました。
    ジャンにとって、一番最後に交わした父親との会話だったんですよね。
    エロじじいでしたねw。男ってアホだ〜♪

  4. >ニジンスキー、最後の跳躍
    もし自分に想像力だけが残されたら、“自由と失った自由”のイメージとして、いったい何を思い浮かべるだろう。 ちょっとしたユーモアと豊かな想像力は、生きていくうえで不可欠なものなんだ。
    そんな事を考えてしまいました。
    「モンテ・クリスト伯」が出てきた瞬間にとらねこさんの顔が思い浮かび、“はやいとこ読まないといかんな”と・・・(苦笑)
    お勧めはどのバージョン(役者とか出版社とか)でしょうか?

  5. 哀生龍さんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
    >“自由と失った自由”のイメージ
    分かります!私も、これは考えてしまいましたね。
    やっぱり、鳥とか蝶とか、飛べる系を思い浮かべてしまいます^^
    ユーモアと豊かな想像力>私も死ぬ間際まで、ユーモア精神失いたくないなあ♪
    なんて思います。
    モンテ・クリスト伯を思い浮かべて、私のこと思い出してくれて嬉しいです♪
    哀生龍さんは『ダルタニヤン物語』も全巻読破されましたもんね〜!
    >オススメはどのバージョン
    映画の方は、ガイ・ピアースの出てるのしか見ていないんですが、(これつまんなかったですね)
    本だと、新潮の世界文学全集の方が、翻訳の出来が良かったです。
    新潮の文庫は廃盤になっていて、文学全集だと、やたらとぶ厚いので、持ち歩くのが大変で、途中で断念してしまいました。持ち歩くには、やはり岩波文庫版ですね☆
    モンテ・クリスト伯は、すっごく面白いですよ〜♪

  6. 独断的映画感想文:潜水服は蝶の夢を見る

    日記:2008年7月某日 映画「潜水服は蝶の夢を見る」を見る. 2007年.監督:ジュリアン・シュナーベル. 出演:マチュー・アマルリック(ジャン=ドミニク・ボビー),エマニュエル・セニエ(セリーヌ・

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    日記:2008年7月某日 映画「潜水服は蝶の夢を見る」を見る. 2007年.監督:ジュリアン・シュナーベル. 出演:マチュー・アマルリック(ジャン=ドミニク・ボビー),エマニュエル・セニエ(セリーヌ・

  8. 『潜水服は蝶の夢を見る』’07・仏

    あらすじ昏睡状態から目覚めたものの、左目のまぶた以外を動かすことができないジャン=ドミニク・ボビー(マチュー・アマルリック)。意識は、はっきりしているにもかかわらず、言葉を発することができない彼に、言語療法士のアンリエット(マリ=ジョゼ・クローズ)はま…

  9. 「潜水服は蝶の夢を見る」

    ある日、脳梗塞で倒れ、全身麻痺となった雑誌「ELLE」編集長ジャン・ドミニク・ボビーの生き様を実話をもとに描いた感動のヒューマン・ドラマ「潜水服は蝶の夢を見る」(2007年、仏米、ジュリアン・シュナーベル監督、112分)。ボビーは全身の中で唯一動くのは左目の…

  10. 潜水服は蝶の夢を見る

    2007年上映 監督:ジュリアン・シュナーベル 主演:マチュー・アマルリック 2…

  11. TB&コメントさせてもらっちゃいますねぇ〜。
    私も「空を飛ぶ夢」を思い出しました。
    あちらは最後が悲しいですが、こちらはうって変わって、最後までがんばった分だけ、
    さわやかさが違いましたねw
    それにしてもフランス語が環境に似合うこと似合うこと・・・。
    この言語がこの映画の良さを増幅してた様な気がします。

  12. oguoguさんへ
    こんにちは〜♪コメントありがとうございました!お久しぶりです。
    ええ。『空を飛ぶ夢』とは、対を成すかのような作品ですよね。
    自分はアレハンドロ・アメナーバル監督が大好きなので、まさかこちらの作品を、こんなにも気に入るとは思いませんでした。
    この作品もまた素敵な作品ですよね!私は、これは思わず去年のベスト3に入れた、忘れられない作品です。
    そうそう、ラストが違うのですよね。尊厳死の捉え方が違うのですが、こちらはより感動的に仕上がっていますよね。
    この作品大好きだったので、嬉しいです。
    おっしゃる通り、フランス語が似合う作品ですよね。
    フランスの製作の作品で、こんなテイストのものがあるなんて、当時少し意外に感じたのを覚えています。

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    20万回の瞬きで自伝を綴った??.




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