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※13.『幸運の25セント硬貨』

幸運の25セント硬貨原作/スティーブン・キング。
忙しくてずっとUP出来てなかったのだけれど、本当は去年の夏同様、今年の夏もキングを読んでいたんだ。1ヶ月も前に読み終わってたんだけどね。
今回のキング短編集は、キング自身が1999年の交通事故による瀕死の重傷事故の後に、世に出たもの。




事故後に「創作のリハビリ」と称して書かれた『ライディング・ザ・ブレット』も含んで。アメリカで出版されるものは、元々ぶ厚くて、一つの短編集ではなくて、二つに分けられたりするのだけれど、今回は3つに。
言ってみれば、『ライディング・ザ・ブレット』だけ、別物扱いになってるとか。
散歩中のキングをよそ見していて、後ろから誤って轢いてしまった運転手の名前が、なんでも「ブレット」というとか。それを聞いて、なんだか納得してしまうね。


1.なにもかもが究極的


 いじめられっ子の逆襲は、キングの得意分野みたいなもんなの。
追いつめられたものが、何をするか分からない、そういう「この世への復讐」みたいな。この話は、いじめられっ子が、実は「マル超」だった。
つまり、超能力者だった、なんていう・・・。アタマの中をプログラムされる話。
Eメール一つで、知らない誰かに何かが出来ちゃうのって、いいと思う?


2.L.Tのペットに関するご高説


 キングも言うように、今回の作品の中でこれが一番だとか。
朗読会でいつもこれを披露すると、評判がいい、なんて喜んでるキング。
人前で、こうやって話をするのが大のお得意なのは、まるで『スタンド・バイ・ミー』のゴーディみたい。彼のこと、思い出しちゃうな。

 猫を飼ってる妻と、犬を飼ってるダンナの夫婦が、仲が悪くなるにつれて、だんだん相手より、双方のペットと仲が良くなっちゃうの。
しかも、本当は、もともとがお互いへのプレゼントであげたはずだった、猫と犬なのに。
くだらない笑い話が、途中から悲劇へと急転換するのが哀れ。
日常生活に転がってる、よくある笑い話みたいに、気軽に読める感じ。


3.道路ウィルスは北へ向かう


 イカレた妖気を発する絵を買った男の話。
いかにも「この絵は、作者の怨念がこもってそうだ」っていう絵画を、買ってしまうの。こういったテイストは、短編にはもって来いのホラーで、私は懐かしさすら感じちゃう。だんだん絵が動くとことかね・・・無性に好き。


4.ゴーサム・カフェで朝食を


 キングの禁煙の話って、本当面白いんだよね。前も、禁煙の秘密結社みたいな話があって、それも最高だったけど。
これは、青天の霹靂みたいに、突然出て行った妻との再会を前に(弁護士もいるんだけど)どうにも切羽詰ったやり切れない思いを抱えた男が、イライラ自分の思いと禁煙の思いを持て余すのがなんとも読んでるこっちに伝わっちゃう。
そのどうにもならない思いに関する描写力がさすがに上手だな。
で、そこで終わらないのがまた、キングなのね。

 他の誰かの作者と違って、プッツーンと切れたところで、ホラーが始まると、
「Rock’N’ Rollの始まりだ〜!」っていうテイスト。今英語の表現で「ロックンロール」と言ったけど、ほとんどこれ、ハードコアだからよろしく。それがまたキング。
言ってみれば、SLIPKNOTの世界ね。血まみれだぜ、イェーイ♪


5.例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚


 これはなかなか、不条理系の話。ホラーというより、まるでSFの1シーンみたい。メビウスの輪に捉われるのって、やっぱ地獄の一形態だろうな。
時間が捻れたところに存在する時間。


6.1408号室


 昔からホラーに馴染んできた私としては、こういう「オバケ屋敷の話」なんて、大好物中の大好物なワケ。
「来たよ、来たよ」なんて、目を輝かせちゃって、本当に楽しかった。霊を信じない小憎らしいこの作家が、恐怖に打ち震えるのを待ってる、って算段なのね。


 「相手を怖がらせるには、一体どれだけの怖い話をすれば、怖がるだろう?」
そういうことを日夜考えてる、プロ中のプロ。・・・それがキングだと考えて、ま、想像してみてよ。
そうすると、こういう話が出来上がるってこと。
恐怖をクリエイトする話と、その技術って・・・?
そういう視点から見るホラーって、絶対楽しいと思う私!


7.幸運の25セント硬貨


 やたらと運がついて回る25セント硬貨を、ふとしたことで手にした話。
ちょっといい話のように思えるでしょう?奇妙な気分で終わるラスト。
この辺りからのキングは、そうした作風が多くなる。つまり、この物語のラストは、どう転ぶのか、それは分からないの。
私はね、その代価をいつか払う日の方が怖いよ。
キングファンは、『デッド・ゾーン』を思い出すんじゃないかな?


あーやっぱ、キングは楽しいな。
時間がないから余り読めないんだけど、そういうのって寂しいな。・・・
心おきなくキングを読む時間が、また来ますように♪


 

2007/09/27 |

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コメント(8件)

  1. こんにちは!
    うわ〜コチラの本を読まれたんですね。
    私も読もうと思って手元にあるのですが、まだ読んでいないんですよ〜
    とらねこさんの感想は、自分が読んでから読ませて頂きますね(分かり難い言い方・笑)
    代わりに『ライディング〜』は読了しました!
    感想も近い内にupしようと思っています。(まぁ〜予定ですが・汗)
    結構面白かったで〜す。
    キングは面白いですね〜色んな作品を読みたいと思っています。

  2. 由香さんへ
    こんばんは〜由香さん♪誰も来てくれないところへ、コメントありがとうございます!とっても嬉しいです
    由香さんも、手元にありましたか!
    私、前に由香さんがこの話してくださった気がして、自分が書きあがった後TBしに行ったのですが、これだけなくって、「アレ?」と狐につつまれて・・・あれ、狐につままれてしまいまし・・
    使い方あってます?
    ま、いいか★
    由香さんは次回、『ライディング〜』ですか!嬉しいな。私も、キングが読みたいのですが、しばらく私生活が忙しくなるので、ちょっと難しいです。うーん、寂しいですね。
    でも、キングが面白くなってきたなんて、とっても嬉しいです〜!ありがとう、由香さん

  3. すいません。わたしもこの本は読んでないんですが・・・
    キングは一時期ちょこちょこ読んでました。一番面白かったのは『グリーンマイル』かな。あの刊行形式にやられた気がします。別名義で書かれた『バトルランナー(ランニング・マン)』も、痛切ですけど個人的にかなりツボな作品でした
    映画化作品ではクローネンバーグの『デッドゾーン』が特に好きですね
    >いじめられっ子の逆襲は、キングの得意分野みたいなもんなの
    思い当たるのは『キャリー』と『豚っちりホーガン』くらいですが、他にもあるんでしょうか。『クリスティーン』もそうだったっけ?
    キングが瀕死の事故にあってたなんてことも知らなかったです。デッドゾ-ンに行かなくてよかった(笑)。それともペットセメタリーに埋められたのか?

  4. SGA屋伍一さんへ
    こんばんは〜★コメントありがとうございます!
    『グリーン・マイル』私も大好きですよ〜。
    ミスター・ジングルズぅ〜♪ネズミの遊園地って、ミッキーのことか?
    『バトルランナー』!私も超大好きです!
    SGAちゃんてば、ちゃんとネタあるのに、今まで黙っていたのですね〜。ニクイね〜!
    『デッドゾーン』は、最近ドラマになってるの、知ってます?私のリアルの知り合いが教えてくれたのですが、すごい面白いらしいですよ。
    あ、いじめっ子の話ですが、『スタンド・バイ・ミー』のゴーディも、上級生のエースにいじめられたり、『グリーン・マイル』もパーシーって看守につきまとわれたりしますよね?
    『キャリー』みたいに、ものの見事に“いじめもの”というのではないにしろ、精神的に、いじめっ子とか本当に嫌なヤツとかに、追い詰められていくんですよ。
    あと、『最後の抵抗』なんかも面白いですよ。これなんかは正に、社会的に、徹底的に追い詰められてゆきます。
    いじめる奴があまりにいつも生き生きと描かれているので、アメリカ人社会って、そんなに生きにくいのかな〜って、昔からアメリカ人が怖かったですw

  5. たいがい遅レスで申し訳ないんですけど
    >バトルランナー
    はシュワちゃん主演の映画を先に観ていたせいで、なおさらショックでした。っていうか、映画とは全然別の話ですね
    >『デッドゾーン』は、最近ドラマになってるの、知ってます?
    興味はあるんですけど、海外ドラマまで追いかけてる余裕がありません・・・
    本当にみんな『24』とか『LOST』とか、よく観てるよなあと。そして羨ましい・・・
    >いじめっこの話
    そういえば『IT』もいじめられっ子集団の話でしたよね。キングさんもきっと学校ではおどおどびくびくしてたんだろうな
    あと『20世紀少年』ってかなり『IT』を意識してるんじゃないかな、と思ってます
    ほかにモダンホラー系の作家では、R・R・マキャモンが好きでした

  6. SGA屋伍一さんへ
    おはようございます〜。
    久しぶりにこっちへ戻って来てくださり、ありがとうございました☆
    >バトルランナー
    あ、これ映画の方がお好きでしたか?私は、原作のあの、どこまでも重い世界観の方が好きです。
    確かに映画とは少し違うかもしれませんが、映画も結構頑張ってたから好きですよ。
    >海外ドラマ
    ですね〜。海外ドラマにハマる人は大抵、CSとかで観てる人だと思うんですけど。
    私は海外ドラマは、ようやく『プリズン・ブレイク』vol.1が5話だったかな?まだまだです(遅すぎ〜
    >いじめっ子の話
    うん、ITもグループで世界に立ち向かう、っていう・・あの話は長かったですね〜。私はあの頃が一番キング好きだったんですが、あの時代のキングはどれもこれも無駄に長いんですよね。
    『20世紀少年』は当時スピリッツ読んでましたね。
    マキャモンはまだ読んでないです

  7. こちらにも〜!早速、拝読させていただきました。
    わたし、実はキングの小説、一冊も読んでいないんです。ホラー映画は、スプラッタものでない限り、わりと観賞できるのですが、ホラー小説となると、ダメなんです。文字を読むほうが、映像を目にするよりも、精神的にきてしまうのです。要するに、怖くて怖くてたまらない〜(笑)
    こちらも短編集、あらすじととらねこさんのご感想を拝読して、興味津々なんだけど・・・怖すぎ〜っ(震)勇気がもし出たら、手を伸ばそうかな。第5話が一番、興味があります。

  8. JoJoさんへ
    こちらにもコメントありがとうございました〜♪
    おや、JoJoさんはまだキングは未体験でしたか!
    ホラーの本なんて読む気しない、というのは分かる気はします。
    私は、物心ついた時にもう読んでいたのですが、実はキングは、文学的な描写がちゃんとできる人なんですよ。
    たとえ、ホラーの話を書いても、冷め切った夫婦仲の中に本当には愛が奥底にあったり、葛藤があったり、子供への本心からの愛があったり・・・そういったものを描くことができる人なんですよ。
    キング自身、よく「文学は書かないのか?」なんて、言われたことがあるんですが、わざわざ好き好んでホラーを書き続けているんですよ。
    JoJoさん、もしキングを読む気になったら、是非『グリーン・マイル』から読んでみてくれませんか?
    ホラー描写はほとんどないですし、すごく面白いんですよ。絶対後悔させませんから!
    よろしくお願いします〜!




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