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#108.インランド・エンパイア

インランド・エンパイアキましたねぇ、リンチワールド!かなり今回、キテます。
まさにド真ん中な感じ。
現実なのか、悪夢なのか・・・。
一言で言えば、リンチの大好きな悪夢の世界。
濃度の濃いリンチファンにも、ずっしり来ること間違いナシな作品だ。



冒頭部分の、映画の撮影現場から、一気呵成に混迷の様相をし出す辺りは、さすがに震えました。
ぃやっほ〜いきなり来たね、と。
何者かの存在、これを追って、奥まで行くところから、すでにリンチワールドの真ん中にザックリ入っていくのだ。
映画という世界を、夢同様に、現実に隣合わせに、迷い込んだ世界として描くところが、この人ならでは。

その辺り、普通一般の感覚とはちょっと違うと感じる人もいるかもしれないのだけれど。この人にとっては、映画産業、というところに、悪夢やねじれた渦巻く何かを描くのですよ。『マルホランド・ドライブ』しかり。
この作品では、映画のセットそのものが、悪夢への入り口だったりして、いつもよりずっと妄想度も高いのだ。うはw

リアルと思って見ていたシーンが、悪夢・妄想・イマジネーションの世界へと移行していく、という、迷宮のラビリンス。
で、ラビリンスが、インランド・エンパイアという、宮殿にあるのね。

扉扉を何枚開けても予想した通りの部屋繋がらず、自分がどこに居るのか、地図すら描けないし、この宮殿内の見取り図が頭に入らない(笑)。

自分がどこにいるのか、地図の描けない、四次元立方体、テッセラクト。

夢に深く深く入り込んで行く際に、階段を下りる・・・これ、実は、ユングの引用なのだけれど、夢を見る時に、一段深い無意識のレベルに、まさに「降りてゆく」という・・・。
“扉”というモチーフが、夢で使われるのはすごく多いけれど(「知覚の扉」と言ったブレイクを元に、ジム・モリソンが自分のバンド名にしたのは、有名な話よね♪)、映画の中で何枚も何枚もドアを開けると、その度に不安度が増すよう・・・。

私ね、「夢を専門に勉強がしたい」と思ってまして、随分前から、夢に関する学術書を読んでいます。
普段からワケ分かんない系の映画が割と好きだったりするのですけど、私の指がポキポキ言っているの、PCの向こうから感じられますでしょうか(笑)
好きなのよね、私。

何でかって言うとですね、要因とか帰結とか、理論で割り切れないじゃないですか、こういう世界って。
アリストテレスは、「起きている間は、皆の知っている一様の世界。だが、眠りに入った途端に、皆自分の世界へと帰ってゆく。」と言ったのですが、そうした、主観の世界なので、理屈もへったくれもないんですね。

だから、理解しようとする前に本当は、皆どこかで分かっている
たぶん、無意識の領域で。
それが、リンチの悪夢世界なんじゃないでしょうか。誰もが、夢の中で経験している。本当は。
わざわざ、「分かる」とか、「分からない」とか、言う必要性さえ、ないのでは?


だって、皆経験しているじゃない、って。


ところで、映画中に画面がチェンジする直前に、パンチ穴が画面右上に現れるのね。そしてその何秒後、もう一度右上を注意して見ていると、すぐまた現れる。
パンチ穴、英語で言うと、Cigarette burnsと呼ばれるもの(というのは、ジョン・カーペンターの“マスターズ・オブ・ホラー”の中の、『世界の終わり』で出て来たんだけど、最近だと『ゾディアック』でも、一言使われましたね。)
で、このパンチ穴の次に、必ず別の世界へと移行して行ったようだった。

そして、いやはや、ハンディで撮ると、ギドクの『リアル・フィクション』もそうでしたが、どうしてあそこまで妙な空気感が感じられるだろう?
そういえば、『HOTEL』も、そうしたシーンがありましたし、同じく、『隠された記憶』もそうでした。
この手の手法としては、リンチが着手したのは、遅すぎでは?なんつって。

ところで、ウサギさん3匹による、シットコムの世界と言うのは、面白いアイディアだったなあと。
妙なタイミングで笑いが起こって不気味。
『不思議な国のアリス』を思わせるウサギさんだけれど、迷宮に居るのは、私たち観客の方なのですよね。つまり立場が逆転してる、ということかな?

そして、ローラ・ダーンの、忘れられない強烈な、一瞬の二次元アニメ!
爆笑してはいけないのだし、ビックリして笑ってる場合でもないのだけれど・・・

このために、ローラ・ダーンをキャスティングしたのかと思ったw
絶対アレでしょ。
「絵を描いてみたい女優さんナンバー1」それがローラ・ダーンにちげえねぇ
「ローラ・・・ダーーーーン!!!!!!!」
って言いながら撮ってたでしょ、デビッド。きっと。

ところで。
3、4年前に、一緒によくつるんでいた、ニュージーランド人の友達が何人か居たのだけれど。
彼らの一人、マークという人は、初めて会ったときに、一番好きな監督は?と聞いたら、なんと「デビッド・リンチ」と答えたのです。
で、『イレイザーヘッド』『エレファントマン』『ブルーベルベット』『ワイルド・アット・ハート』の話をした後に、『ツイン・ピークス』は見たか?と私、聞いたんですね。
そしたら、「7回見たよ」と言われた。
負けた、と。

そのマークと、一緒に『マルホ〜』を見たのです。私には、大切な思い出だったりします♪

8月6日追記。この先、ネタバレの感想:::::::::::::

 

ニッキー(ローラ・ダーン)が映画の撮影中に、突然誰かの足音を聞きますが、それが後で自分だったと分かりますよね?
自分は、それを、彼女自身の夢をさまようドッペルゲンガーと判断しました。
後に、ラストの場面を見る限り(フィルムに映っている自分)、自分のドッペルゲンガーに出会って死亡したのだと。つまり、

彼女自身の夢の中で自分の未来の姿を見ているので、
そちら、夢の側から見た世界と、現実の世界が

 

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コメント(56件)

  1. インランド エンパイア

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  4. 『インランド・エンパイア』を観たぞ〜!

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  5. インランド・エンパイア/INLAND EMPIRE(映画/DVD)

    インランド・エンパイア
    (原題:INLAND EMPIRE)
    トラブルに陥った女の話
    製作:2006年(アメリカ)
    配給:角川映画
    ジャンル:ミステリー/ドラマ
    <キャスト>
    ローラ・ダーン
    ジェレミー・アイアンズ
    ジャスティン・セロー
    ハリー・ディーン・スタント…

  6. インランド・エンパイア/INLAND EMPIRE(映画/DVD)

    インランド・エンパイア(原題:INLAND EMPIRE)キャッチコピー:トラブルに陥った女の話製作:2006年(アメリカ/ポーランド/フランス)配給:角川映画ジャンル:ミステリー/ドラマ上映時間….




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