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#97.ボルベール<帰郷>

ボルベールママ!お母さん!!・・・今すぐ、私ももっと母と分かり合わなくちゃ!
強くて美しい、母としてのペネロペが、くっきり鮮やかに人の心を捉える。
ワーキング・クラスの女性でありながら、たくましくセクシーに、愛に溢れていて、時に疲れていて、・・・
全ての母親、女性たちにアルモドバルが捧げた、珠玉の愛の作品。



ストーリー・・・
失業中の夫の分まで働く、気丈で美しいライムンダ(ペネロペ・クルス)。だが彼女の留守中、夫が15歳になる娘パウラ(ヨアンナ・コバ)に関係を迫り、抵抗した娘は勢いあまって父親を殺してしまう。愛娘を守るため、ライムンダは必死に事件の隠蔽を図るが、その最中に「故郷の叔母(チュス・ランプレアヴュ)が死んだ」と知らせが入る。一方、葬儀のため帰郷したライムンダの姉ソーレ(ロラ・ドゥエニャス)は、大昔に火事で死んだ姉妹の母の亡霊が、1人暮らしだった叔母をこっそり世話していた、という奇妙な噂を聞く。・・・

アルモドバル’98年の作品、『オール・アバウト・マイ・マザー』で鮮烈な印象を残した当時のペネロペは、まだみずみずしい、まっすぐとした美しさだった。尼僧の役をやったけれども、穢れを知らない、だがいつの間にか妊娠してしまう、複雑な役をすんなりとこなして、出番は少ないけれども忘れられない強烈さを与えた。
この映画自体、本当に素晴らしくて、私にとって特別な作品となった。

そのアルモドバルとの、『ライブ・フレッシュ』(’97)と合わせて3度目のタッグとなるこの作品は、アルモドバルをして「ペネロペのために書いた」と言わしめる。
なんとはなしに『赤いアモーレ』をも思い起こさせる今作。ペネロペは、やはりハリウッドじゃ、ちっとも面白くなんか、ない。
赤いアモーレではイタリア語だったけど、こちらでは彼女のスペイン語が聞ける。やっぱりペネロペはスペイン時代でしょ。(後追いだし不完全だけど〜。まだ入荷してない頃の渋谷TSUTAYAで、さんざんリクエストしたの、私なんだからっ。←何をエバっている!^^;)

さて、この作品。前作と打って変わって、女、女、女。6人の女が登場する。
母。娘。そのまた娘。姉。叔母。隣人。
様々な女性の物語。

次のシーンの予測がつかないこの物語の舵取りぶりは、なんだかキム・ギドクを思い出してしまった。
物語の展開の中で、次第にハマりこんでゆく人間の複雑さ、女という人生の錯綜さを垣間見て、少し疲れを催す。
女って、男って、・・・愚かで面倒な存在。

だが、このライムンダのまっすぐぴんと伸ばした姿勢を観ていると。
底辺にあっても、何があっても、したたかで強く美しいその姿に、強く心を打たれる。
娘のために、ということで、母はここまで強くなれるのだろうか。・・・

いつも美しいライムンダの姿を、こんなにまで美しく描くことで、起こる出来事の泥沼さとは別に、
アルモドバルからの、女性性に対する、一本芯の通ったリスペクト精神を感じた。

・・・明日への勇気をもらった。
強さに喝采を、美に憧憬を、女性の存在そのものに対する、エールを強く感じた。

私は今は、時々、頑張れないのだけれど。
もう少し頑張ろう、と思えた。

アルモドバル作品として言えば、母の力強さを描いた作品だった分だけ、表現方法も分かりやすく感じられた。
だけど、私は、この作品に関して言えば、時間が経ったらもっと好きになる作品、という気がしている。
きっと、自分が母親との別離を経験したり、女性としての人生に深みが増すに従って、心の中で懐かしく感じる映画・・・
自分にとっては、そんな作品になるのではないか、という位置づけです。

カルメン・マウラ

 

 

 

 

 

 

 

 

このシーンが、とても好きだったな母が一番かわいかったw
車のトランクのシーンとか(笑)

VOLVER、“故郷”とは、何だろう?
全ての人が帰る場所とは?

それは、母なる大地。

ライムンダの冷蔵庫に、あるものを隠す、というこの表現、
母なるものが死をも内包している、というこの表現をどう捉えるか。

ギリシア神話の大地ガイアという存在がある。
“大地”こそ、春になると植物が新しい“生命”を宿して、芽生えさせ、夏を経て“実り”、“豊穣”をもたらすもの。
そして、冬の訪れと共に、いわば死んでゆくところだ。

大地ガイアが天・ウラノスや山々、海、ポントス、原初の神々を生み出した一方で、そもそもの初めから冥界・タルタロスとも繋がっている。
それは、古事記の中で、イザナミノミコトが、国を産み、神々を産むの一方で、黄泉の国の神となったのと、類似していると言える。

つまり、母なるもののイメージというそこに、死の影を孕ませるのは、決して神話学的に、珍しいことではないと言える。

ボルベール<帰郷>@映画生活

 

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コメント(71件)

  1. あけましておめでとうございます。
    遅くてごめんなさい。
    今年もよろしくお願いします。
    この映画やっと観ました。
    大絶賛の声が多いなか、テンション低めで楽しみました。
    あんなことを泣き崩れて身近な男性を頼っちゃうよな女たちではないところはよかった。
    んだけど、その後どーなっちゃうんだろって気になるなぁ。
    挨拶のチュチュチュが激しくって驚きました。
    スペインではフツーのことなのかな?

  2. 映画レビュー一覧 た??わ行

     80年代までの映画のタイトルは「名作の森(外国映画)」と「名作の森(日本映画)

  3. ボルベール<帰郷>

    2006年 スペイン 2007年6月公開 評価:★★★★★ 監督、脚本:ペドロ・

  4. とらねこさん こんばんは。
    先ほどは間違いTBを送ってしまいました。申し訳ありません。改めて正しいTBを送りなおしました。
    僕はアルモドバルの初期の映画はあまり観ていないのですが、女性讃歌3部作はどれも素晴らしいと思います。

  5. AnneMarieさんへ
    あけましておめでとうございます!
    こちらこそ、ご挨拶が遅れてしまい、ごめんなさい。
    アンマリーさん、今年はベストをやらなかったでしょう。
    去年はやったのに。。ちょっと寂しいですー。
    アンマリーさんはこの作品はちょいいまいちかな?
    確かに、あんなことをしちゃうなんて、という感じなんですかね。
    自分にとっては・・なんですかね、すごくすごくこの人の世界観が好きなんですよね。
    一言じゃ言えないんですが・・
    チュッチュは激しかったですね(笑)

  6. 銀の森のゴブリンさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました☆
    魅力的なブログタイトルで素敵だなーと思っておりました。
    TBどうも嬉しかったです^^
    私も、アルモドバル、女の三部作は本当に大好きです。
    どれもこれも好きで選べないんですよね・・・。
    またよろしくお願いします〜☆

  7. 『ボルベール〈帰郷〉』’06・西

    あらすじ失業中の夫の分まで働く、気丈で美しいライムンダ。だが彼女の留守中、夫が15歳になる娘パウラに関係を迫り抵抗した娘は、勢いあまって父親を殺してしまう・・・。感想カンヌ国際映画祭では、素晴らしい谷間の主演のペネロペ・クルスはじめ6人の出演者が女優賞…

  8. mini review 07276「ボルベール<帰郷>」★★★★★★★☆☆☆

    カンヌ映画祭で最優秀脚本賞と最優秀女優賞を受賞し、各映画賞を席巻している珠玉のヒューマンドラマ。母として、娘としてのままならない人生をたくましく生きる女性たちの生き様を描き上げる。監督は『バッド・エデュケーション』のペドロ・アルモドバル。主演はアルモドバ…

  9. TBありがとう。
    僕も彼女の主演作はいくつも見ているけど、「赤い
    アモーレ」が強く印象に残っています。
    イタリアで、ちょっと気の毒な役柄でしたが、彼女のたくましさのようなものが、よく出ていた映画でした。

  10. kimion2000さんへ
    こんばんは★こちらこそ、TBありがとうございました。
    『赤いアモーレ』、印象的ですよね。
    私も、この役は、『赤いアモーレ』の彼女を見たアルモドバル監督が、昔からよく知ってる女優である彼女を起用した、そんな風に、アルモドバルの彼女へのエールのようにも感じてしまいましたよ。・・・

  11. ボルベール

    ボルベールコレクターズ・エディション(2008/01/01)ヨアンナ・コバ、ロラ・ドゥエニャス 他商品詳細を見る
    感動する家族愛ドラマかと思ってましの..

  12. 『ボルベール <帰郷>』

    ボルベールコレクターズ・エディション(2008/01/01)ヨアンナ・コバ、ロラ・ドゥエニャス 他商品詳細を見る
    監督:ペドロ・アルモドバル 
    CAS…

  13. ボルベール<帰郷>

    ペネロペ・クルス/ボルベール<帰郷>コレクターズ・エディション
    ¥4,935
    スペイン 2006年
    ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ブランカ・ポルティージョ、ヨアンナ・コボ
    監督・脚本:ペドロ・アルモドバル 『オール・アバウト・…

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  15. 映画『ボルベール<帰郷>』

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  16. <ボルベール< 帰郷>> 

    2006年 スペイン 120分
    原題 Volver
    監督 ペドロ・アルモドバル
    脚本 ペドロ・アルモドバル
    撮影 ホセ・ルイス・アルカイネ
    音楽 アルベルト・イグレシアス
    出演 ペネロペ・クルス  カルメン・マウラ  ロラ・ドゥエニャス
       ブランカ・ポルティージ…

  17. 『ボルベール<帰郷>』

    ペネロペ・クルスがアカデミー主演女優賞にノミネートされたことでも話題になったペドロ・アルモドバル監督の最新作。
    家族の結びつきを考えさせられる、母親という象徴をテーマにした作品でした。
    ここ最近のアルモドバル作品は、母親をテーマにした作品が多いですよねー…

  18. 『ボルベール<帰郷>』 Volver

    挨拶のキスも濃厚な情熱的なスペインのラ・マンチャ。
    閉鎖的な田舎町で、人々は好意的だけれども信心深くお節介で。
    その中でもひときわ美しく、情熱的なライムンダ。
    しかし人には言えない過去がある彼女。
    そのせいで母親とも確執を抱えたまま、その母親はもうおら…

  19. 「ボルベール」 DVD

    べド口・アルモドバル監督(「オール・アバウト・マイ・マザー」)の作品。展開は結構ハチャハチャでコメディであり、殺しや出生の秘密、胸の谷間などがまぶされつつ、カメラ・アングルも意外にオチャラケも混じってる。が、馬鹿だなあというより、家族の繋がりや母性など女…

  20. とらねこさん☆こちらにも
    おばあちゃんがキュートでした♪
    私もベットの下の隠れるおばあちゃんが好き。
    特にひざ下のストッキングが・・・(笑)

    母は強くなるものです。
    そして離れてみて、また失ってみてより一層その存在を強く感じるのでしょうね。
    監督の女性・とくに母に対するリスペクトを強くかんじました。
    でも、仕方ないとはいえ殺人が正当化されちゃうのがイマイチだったなー

  21. ノルウェーまだ〜むさんへ

    こちらにもありがとうございます♪
    お祖母ちゃんキュートでしたよね。
    膝下ストッキング!w うちのお祖母ちゃんも履いてたなあ

    母へのリスペクトのこの作品、素敵でしょ?
    アルモドバル作品て、こういう母・女の強さについての物語も時々あるんですよ、そして全部傑作ばかりなんですよ♪




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