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#94.ゾディアック

ゾディアック“『セブン』のデビッド・フィンチャー”なんていう謳い文句と、この左の日本のポスターの、いかにも計画的犯罪の匂いのしそうなロゴ。それからこの暗号文・・・
それだけで釣られてしまうと、大半の人の期待を裏切ってしまいそうな感じがする。



風刺漫画家のグレイスミス(ジェイク・ギレンホール)と、新聞記者エイブリー(ロバート・ダウニー・Jr)の働く、サンフランシスコ・クロニカルに、とある犯罪に関する表明文が届いた。この新聞社の他、3社に宛てて送られているもので、掲載しないと、よりたくさんの犯罪を行う、という脅迫と、暗号文だった。初めに名を名乗らないそれは、次に“ゾディアック”と自らを名づけた。・・・

実際にあった事件を元にした、この犯罪ミステリは、途中で、色合いを「あれよあれよ」と変え、面食らってしまう。
↑に述べた、いかにも派手派手しい犯罪予告文、表明文、“謎解きサスペンス”の風合いから、とあるシーンを境にガラっとテイストが変わってしまうのだ。
そこは、私が思うに、この辺りだった。

ロバート・ダウニー・Jr演じる、記者のエイブリーが、危険を承知で犯罪現場に赴き、片や、ジェイク・ギレンホール演じる、いかにも“謎を解き明かしそうな人物”と思われたその張本人が、友人のエイブリーの身の危険の際に「デートのため」と断ってしまう。
そして、突然メラニーという女性(クロエ・セヴニー)とのはにかみデート・・・。
「今、エイブリーは、犯人に呼ばれている」なんて言いながらディナーを食べるのだけど、どう見ても味なんか分かってないし、お互い天然ボケ同士ボな感じの、妙な間合いの会話が続く。

この辺りで、完全にこの物語のトーンと、それまでの緊張感漂う、“謎解き犯罪タッチ”な味わいを失う。
ここで、「アレ、おかしいな・・・?」とようやく私たち観客は気づくのだ。
フィンチャーは、犯罪ミステリーを描こうとはしてないな、と。

『セブン』でその衝撃的な映像と、完成度の高いミステリを確立したフィンチャー。もはや、最近とみに過激化する、猟奇的な犯罪モノが、最早、ミステリーというより、その猟奇性を謳ったテイストで、次々に現れてはその一時の話題をさらう映画たち・・・
こうしたものとの決別を図った、一作だったのかもしれないな、と。

そもそも、69年にその発端を発した、実在の事件の映画化作品、ということからして、もしかしたらと気づくべきだったのかもしれない。
古き良き異常犯罪。・・・なんて言う言葉はないけど。
『マーダー・ケースブック』という、これまでの犯罪を扱った、実際にあった事件シリーズの雑誌に載ってそうな犯罪者たち、・・・とりわけ、チャールズ・マンソン、テッド・バンディ、エド・ゲインと言った、誰もが聞いたことのあるような、歴史に残る犯罪者たち・・・その中でも、どこか煮え切らない印象がするのがこれ。

一方で一時はマスコミを賑わすも、20年も犯罪者は隠れ続けた挙句、未解決のまま終わった、どうにもこうにもダラダラのゾディアック事件簿・・・。
これをあえて選び、映画化したフィンチャーなのですね。
数あるミステリーの中でも、完成度が極めて高く、忘れられない傑作の、『セブ
ン』。
自分がやってきたことを、あえて一旦ホゴにするかのような。
新たな方法論で“物語を作る”というかのような。・・・

『パニック・ルーム』でガッカリさせられたけど、あえて方向性と風向きを変えてゆくことで、もう一度宣言するかのような、そうした一作に感じた。
この作品でついていけなかった人もきっと大勢いるだろうけど・・・。


:::::::以下ネタバレ。見た方だけ読んでください:::::::::


大体、最初の事件の目撃者が生き残って、殺された女性が犯人を知っていた可能性がある、・・・という極めて重大な発言をしているにもかかわらず、それをそのままずっと放っておくなんていうのがまず、信じられないし。
それから、真犯人と思われるアノ人物の職場に刑事が現れ、事情聴取を行った際に、残した証言から、新聞に載っていないある可能性を示唆していたのに。
それをちゃんと調べることも出来ずに、とある一人の筆跡鑑定の一言で、捜査が棚上げにされるのも、見ていて歯がゆいことこの上なし。(というか、一人の筆跡鑑定者がGOサインを出していたでしょうが!)
それに、この映画の中で一番ドキドキしたのは、あの地下室のシーンだったんですけど?

えと、まとめると、筆跡では映写技師が第一候補に怪しくて、
状況証拠では、リーが一番怪しい。ですね?
第一事件の時の女の子の知り合いで、生き残った男の証言もある。
家宅捜索の時に出て来た証拠は、押収してないのよね?全てではないとは言え、手袋、ライフル、一つの事件を示唆する証拠が出て来てるわけですよね。
全てではないのは、模倣犯がいてそのために、事件が攪拌されてるんでしょうか?

それにしても、せっかくのリーの証言前に、突然の病気。
それから、両利き・主に左利きによって導かれるミスジャッジ・・・

疲弊しました。
事件を追っていた人達は一人除いて、全員疲れてリタイアしていきましたが、観てる方もかなりな疲労感です。空しい・・・

ただ、面白かったのは、イタ電がかかって来ても、「それどころじゃない」って感じで、すぐ切ってしまうところ。自分の身の安全より、謎解きに夢中になるグレイスミスの姿が、かなり面白かった。

でも、ちょっと待てよ。
最後まで気になるのは、映写技師と筆跡鑑定が、もしかしたら一致したかもしれない可能性・・・。
てことはつまり、一度グレイスミスが言ってた、「もしかして二人だったのでは」という説が正しいと、考えたくなる。
つまり、犯行文を書いたのが映写技師、
実際に行ったのがリーと。この二人の繋がりは、同じ映画館で働いていたことがある、という接点。
QED・・・かな?

※追記※
コメント欄で、ノラネコさんが、興味深い見方を呈示してくださいました。
よろしければ、そちら↓も読んでくださいまし。

ゾディアック@映画生活

 

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コメント(66件)

  1. コード十二宮 デビッド・フィンチャー 『ゾディアック』

    1960年代から70年代にかけて、アメリカで実際に起きた連続殺人事件を、奇才・デ

  2. SGA屋伍一さんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
    >ここで謝ったところで何の意味もないわけだが
    キャハハ〜☆゚(゚`∀´゚)゚SGAちゃんオモロ〜イ
    『カリギュラ』は実は書いたの1年くらい前なんですが、もしかして、ちょうどこないだ他の方がそこにコメントくれたので、ついでに読んでくださったのですね。ありがとうございます!
    う〜ん、確かにアレはなかなか気合の入った変態作品でした。ケケ☆
    >もう怖くて夜中トイレに一人でいけないっす!
    うひゃひゃ☆「夜中にトイレ行けない」だって。
    おっ子ちゃま〜!
    でも、そういう人ってカワイイと思うおいらw
    あ、ところで、今度『寄生獣』、映画化するんですって。今年秋に公開だったかな?もしコミックまだでしたら、映画を見ましょう〜☆
    DVDになるまで待ってしまうかもしれない私ですがw

  3. ゾディアック

     『この暗号を解いてはいけない』
     コチラの「ゾディアック」は、6/16公開になった全米史上初の劇場型殺人”ゾディアック”事件を描いたPG-12指定のクライム・サスペンスなのですが、早速観て来ちゃいましたぁ〜♪
     監督は、「セブン」、「ファイト・クラブ」のデイヴィ…

  4. ネタバレ・コメントです!
    >「もしかして二人だったのでは」という説
    エイブリーがグレイスミスに対して、「記事になってから犯行声明を出している。他人の事件を自分のものにしている」と言うニュアンスの指摘をしてましたよね?
    だから、あの犯行声明&暗号に関しては、殺人犯本人ではなく映写技師だと(映画で示された証拠から)哀生龍は結論付けちゃいました。
    でも、犯行そのものは、ノラネコさんの意見に賛成!
    何件かは同一犯かもしれないけれど、全てが1人だとは思えない食い違いが、色々指摘されてましたよね。
    映画としては、事件そのものよりも、“ゾディアック”に関わった人々の描き方や、殺人事件そのものは“ゾディアック”が起こした数の何倍も起こっていると言う、当たり前の事実を指摘するような部分が、とても気に入りました。

  5. ゾディアック

    Zodiac 1969.7.4 車でデート中の若いカップルが襲われ、男性は重症、女性は死亡した。 警察には、事件を知らせる通報があり、通報者が犯人らしかった。 それから4週間。 新聞社「サンフランシスコ・クロニクル」に、犯行声明と暗号の一部が送られて来た。 他の新聞社にも、…

  6. 哀生龍さんへ
    こんばんは☆コメントありがとうございます。
    うん、そうですね、私も哀生龍さんと同じように考えていましたし、そうだと思ってたんですよね。
    でも、ノラネコさんの意見は、面白い説でしたよね。
    もはや、この時代のいろいろな犯罪が、都度に取り込まれ巨大化していったように思えて、面白いな、と思いました。
    そうですね、私も、後からいろいろ考えるのが、楽しかったです。いろいろな人と、話をしたりだとか。
    こういう楽しみも、映画ブログの一つの楽しみ方だな〜、なんて思いましたヨ☆
    友達と見て終わりだったら、こういう風には思わなかったはずですから♪^^

  7. 『ゾディアック』

    [DVDソフト]ゾディアック特別版【デジタル0110】「セブン」「ファイト・クラブ」のデヴィッド・フィンチャー監督の最新作で、実在の連続殺人事件・ゾディアック事件をもとに作られたサスペンス。実際に未解決の事件を描いた作品でもあるので、話としては妥当なのかなとい…

  8. 『ゾディアック』’06・米

    あらすじ1969年、自らを“ゾディアック”と名乗る男による殺人が頻発し、ゾディアックは事件の詳細を書いた手紙を新聞社に送りつけてくる。手紙を受け取ったサンフランシスコクロニクル紙の記者ポール(ロバート・ダウニーJr)同僚の風刺漫画家ロバート(ジェイク・ギ…

  9. いやー、目頭、熱くなったねー。
    泣いた。全米があ痛ぁ〜っ!(おでこパチッ)つって泣いた。
    なんか、このゾディアック+真似っこさんに
    振り回されまくったグレイスミスみてたら、
    円周率を人生を掛けて計算し続けて、
    いざスパコンが開発されて計算してみたら間違ってた・・・・(号泣)
    っつー人の話思い出してしょっぱくなった。
    いや!無駄じゃない!無駄じゃないよ!全然!
    だって、UFOに一生かけてる韮澤さん見てよ!
    人生のテンションが違うもの!
    すごいもの!

  10. 白鬚タン
    こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
    アレ?TBは?・・・もしかして、タイトルに「ウンコ」とかついてたので、遠慮されましたでしょうか?w
    ゲラゲラ★
    んね〜。全米、泣かせちゃいましたね。
    で、円周率の人の話。
    なんか、ピッタリのたとえ話ですね〜!素晴らしい。
    ところでスパコンて何だろう?
    無駄なことにテンション高いって、とらねこも憧れちゃう。男のロマンて気がする。
    てかそういう男のロマンを、分かってきた気がしますー♪
    女なんて、計算高くて、嫉妬深くて、「ダンナの給料が」なんていうから、イヤになっちゃうね。
    あー私は何に人生賭けよっかな・・・
    白鬚タン、決まった〜?

  11. 出たがりのうんこ

    <<
    実際にあった劇場型犯罪をとっつきやすく映画化。
    全く実際の事件を知らなくてもまー観れる程度に
    咀嚼されてはいるものの、
    わかりやすいサイコの記録を追うには
    紙媒体には敵わずといった感がぬぐえズ。
    でもまぁそんな事よりも!

  12. てへっ☆ ウンコ許可でたんで(?)はっちゃったv
    そーだね〜、いつまでもドラゴンボールを追いかけられる、
    波紋の修行をする、秘孔を探す、っつー
    そんなネバーランドの住人でいたいけど、
    まず女の友人はいなくなるね(苦笑)
    生命体として繁殖期間があるからだろうとは思うけど、
    余りにも自分+男込みで物事ジャッジされっと、
    オメー、そりゃテメーの事で夢はみろや!って思うよね。
    白鬚は激しく転倒したりしてっけど我が道を行くよ!
    目指せラオウ!!!!

  13. 白鬚タン
    白鬚タン〜!私にウンコごときで、遠慮なんかしないでネ★
    私たちの仲じゃないか〜♪
    で、うん・・ネバーランドの住人で居続けると、いつしか友達減る・・・た、確かに。
    どーりでとらねこの友達は少ないわけだ・・・(泣)
    学生の頃はすごくたくさん友達が居たんだけどなあ(笑
    あんま現実的なことばかり言われっと、つまらないし。
    男がらみで人生が左右されると、人任せなんだよね、所詮。
    だからじゃあ私の責任取ってよってことになるし。
    私も転倒してるなー。転倒した上に「前が見えないよー」って電信柱に当たって進めなくなってる感じ。
    ラオウってのが白鬚タンらしいな^^
    勇ましい♪

  14. PHP研究所,フォア文庫,大和書房(だいわしょぼう),明日香出版社(あすかしゅっぱんしゃ)
    文化服装学院(ぶんかふくそうがくいん),株式会社偕成社(かいせいしゃ),
    金の星社,国土社,小田急箱根高速バス,湘南箱根登山自動車株式会社,箱根ロープウェイ
    ひくまの出版,株式会社主婦の友社,株式会社宙出版(かぶしきがいしゃおおぞらしゅっぱん)
    ブティック社,永岡書店,株式会社スコラ及び株式会社スコラマガジン,青土社(せいどしゃ)
    平凡社,大阪屋,学研トイズ,株式会社SGラボ,学研ステイフル,出版ニュース社,
    ユナイテッド・プレス・インターナショナル,スカイハイニュース社,株式会社日経QUICKニュース社
    創出版,青弓社(せいきゅうしゃ),

  15. 『ゾディアック』を観たぞ〜!

    『ゾディアック』を観ました『セブン』『ファイト・クラブ』のデヴィッド・フィンチャー監督が全米を震撼させた実在の未解決事件に挑むクライム・サスペンスです>>『ゾディアック』関連原題: ZODIACジャンル: サスペンス/犯罪/ミステリー上映時間: 157分製作国:2…

  16. ゾディアック

    この暗号を解いてはいけない




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