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#87.東京ゴッドファーザーズ

東京ゴッドファーザーズ“クリスマスに出会った一つの奇跡”。
「『クリスマス・キャロル』に匹敵するような作品を、生涯に一度でいいから、作れたら・・・。」
おそらくこうした高い目標を掲げて、今敏が作っただろう作品は、「洋画に負けないジャパニメーションを作る!」っていう、極めて高い志の表れだったに違いない。



ストーリー・・・
クリスマスの夜、東京・新宿に生きる3人のホームレス、自称・元競輪選手のギンちゃん(声・江守徹)、元ドラッグ・クイーンのハナちゃん(声・榎本義明)、そして家出少女のミユキ(声・岡本綾)は、ゴミの山の中から赤ん坊を拾う。
警察へ届けようと言うギンちゃんとミユキ。だが、ずっと子供を欲しがっていたハナちゃんが赤ん坊に勝手に“清子”と名前を付けてしまい、結局、情にほだされた3人は乏しい手掛かりを頼りに、雪の中、親探しの旅に出発する。・・・

実写でやるような題材の、“大人のアニメ”。
この作品で初めてアメリカ進出を目論んだ、というのが、いかにも伝わってくる。実際、こだわり抜いた映像らしくて、背景の一つ一つにこだわって作ったらしいアニメーション。
特に目に止まるのは、街の背景に、都会のネオンを薄ボンヤリと溶け込ませた画だ。

物語冒頭からこっち、街を3人で“冒険”する、という、ロードムービーでありながら、ファンタジー・アドベンチャーでもあるこの作品。
主な背景となるのが、「この都会で居るべき場所を見失った、3人のホームレスが、自分たちをしめ出したはずの都会」の中を、闊歩するわけだ。
街を歩く3人の姿と、都会のネオン。これが一番の画になってくるだけに、
都会のストリートに点るネオンが、とても心に残る。それだけに、この画が全て、と言ってもいいくらいの気合を感じる。

色合いはすべてセピアブラウンで統一しているだけに、少し暗めの映像にも感じる。
なんだかとってもシブいのだ。
ホームレスが主人公、ということもあって、子供には少し難しい類のアニメだと思うけれども、
「このレベルの物語を、日本のアニメは出来るんだ~!」
なんていう、迫力と意気込みが、とにかく感じられるのね。

街に飾られたポスターは、初めの方、とても目に止まるのだけれど、その内容は全て、この世の虚飾や欺瞞に満ちたものばかりだ。
“英才予備校”のポスター、幸せそうなカップルの不自然な笑顔、CMのポスターはどうしてどれもこれも、嘘っぽいんだろう。
現代生活に住む我々に、空ろに響く。
ここに居るホームレスの3人は、そうしたものから逃げ出した人達なのだ。

話の中で、いたるところに、3人の心の痛みというものを感じてしまう。
人生に失敗し、結婚に失敗した、ギンちゃん、
子供が欲しいドラッグクイーンのハナちゃん、
お父さんと決定的に仲たがいしてしまった、家出娘の高校生のみゆき。

この3人の掛け合いが楽しくて、・・・特に私は、ハナちゃんの人情派なところが、もう大好きだった!
赤ん坊にミルクをやる時に、「ああ、とうとう夢が叶ってしまうのね、いつかかわいい赤ん坊を抱いてお乳をやる日を、どれだけ夢見たことか・・・」
なんて、大ゲサなところとか、

くそじじい?
くそ
はいいけど、じじいは許さないわよっっっっ!!!」
このセリフは最高

はちゃめちゃな展開に、ありえないくらいの幸運がこれでもか、と続き、
まるでディケンズ風の冒険活劇が繰り広げられるところなんか、本当クラシックテイストで好き。
そして、ホームレスの3人が冒険を続ける中で、次第に自分たちのトラウマや、自分と向き合うところも、とても心に沁みた。
まるで『フィッシャーキング』を思い出すかのような、物語も、とっても私好み。

“アニメ”というジャンルのあらゆる常識、凝り固まったイメージを、覆そうとするかのような、この力作は、ただ、
少し肩の力が入りすぎて、エピソードの盛り込み具合に疲れを催してしまう人もいるかも。人によっては「難しい」と思う人も居そう。
もう少し複雑な事件性をスッキリと整理することが出来れば、まごうかたなき傑作、になったはずで・・・。少し残念。
その方が、断然心に響く、ハートウォーミングな話になったはず。

でも、この作品で出し切る、という勢いはとても感じられたし、諸々のシーンで、興味深いシークエンスを見せる辺り、私はとても好き。
例えば、お札の福沢諭吉が、泣いているように見えたり、その後笑っているように見えたり。

あちこちで、“運命”や、“偶然の一致”、“人と人との繋がり”というのも感じさせられる。
クリスマスから大晦日にかけての、一年の中でも特別なこの時期に、
“他人”との繋がり、家族との繋がり、運命や絆、というものを、少しベタでも、運命なんていうことを、考えさせるこの作品は、とても温かく響く。
今回私は、これから夏、なんていう時期ハズレに見てしまったのだけれど、
冬の時期にとてもピッタリな作品だ・・・

東京ゴッドファーザーズ@映画生活

 

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コメント(18件)

  1. こんばんわ。コメント&TBありがとうございました。
    ジャパニメーションの一番の魅力はとらねこさんも注目されていた背景なんですよね。
    この映画の「英才予備校」などのように主人公と対比させたりしながら、より際立たせるための小さな演出がたくさん散りばめてあって、それを見るのもすごく楽しいんです。
    実写ではここまで細かくできない、それをアニメだからやる。これがジャパニメーションの真髄だと私は勝手に思ってます。

  2. 東京ゴッドファーザーズ

    アカデミーアニメ作品賞ノミネート候補にもなった今敏監督の『パプリカ』公開記念ということでしょうか、昨晩深夜にTV放送されていたので見てみました。以前からアニメファンの熱い支持を受けている面白い作品と聞いていたので楽しみにして見てみましたが、なるほど〜その熱….

  3. 東京ゴッドファーザーズ

    東京に暮らす三人のホームレス。元競輪選手のギン、オカマのハナ、家出中の女子高生ミユキ。彼らはクリスマスの夜、ゴミ捨て場に捨てられていた赤ん坊を拾う。赤ん坊に「清子」と名付けた三人は、清子を捨てた両親を探す事にする。「なぜ赤ん坊を捨てたのか」を問いただす….

  4. おお!ついにとらねこさんもこの映画を観てくれたんですね!
    最高ですよね、この作品。今敏監督の作品では一番好きです。というか僕が観たアニメ映画の中のベスト10に確実に入ります。
    >くそはいいけど、じじいは許さないわよっっっっ!!!
    この台詞、ウチの母親が大笑いしてましたよ(笑)。僕はやっぱりミユキの電話のシーンが好きですね。

  5. 「東京ゴッドファーザーズ」

    2003年 今敏監督
    オープニングの街の様子に感激した!
    看板やトラックなど車を使って映画スタッフを丁寧に紹介してるのがいい。
    このオープニングがやたら気に入ってしまいました。
    ラストシーンのカットアウト的結末も大満足!
    ちょっとドタバタしてるけど、内容は….

  6. にゃむばななさんへ
    こんばんは☆コメントありがとうございます。
    あの背景、とっても素敵でしたね^^
    本当に幻想的で。茶色の柔らかい色って、素敵です。
    おっしゃる通り、3人の気持ちが随所に描かれていて、上手なメタファーの使い方でしたね。
    実写で出来ないことを表現し尽くそうとする、この監督なのですね。
    なんだか、ますます好きになってしまいました。

  7. えめきんさんへ
    こんばんは〜♪コメントTBありがとうございます!
    えめきんさんは以前、この監督さんの作品が好きだ、っておっしゃってくださったのを覚えていますが、えめきんさんの好きなアニメ10本に入るほど、この作品がお好きだったのですね!
    >ミユキの電話のシーン
    公衆電話で電話をかけて、言い出せないところですよね?
    この作品は、作りが複雑で、凝りに凝っているので、ハマればハマるほど、好きになる類の映画だと思います。
    私もこういうの、大好きですよ。

  8. こんにちは!
    今敏は現在ノリにノッているアニメ監督の一人だと思っています。長編監督デビューから外れ無しの驚異の打率を誇っていますからね。
    それが一般的に広まったのが、この『東京ゴッドファーザーズ』ですよ。今敏のクセが薄いですからね。でもまだ完全に広まったとは言い切れないので、これからもっと知名度が上がる事を祈っています。
    日本人はミーハーですから、アカデミー賞アニメーション部門でも受賞すれば、簡単にそうなりそうな気がします。なんて、凄い事をサラっと言ってしまいましたね(笑)でもそれが実現してもおかしくない力量を今敏は充分持っていると僕は思っています。

  9. ミツさんへ
    こんばんは〜☆こちらでは初めまして!
    コメント、TBレス、ありがとうございました。
    >今敏は現在ノリにノッているアニメ監督の一人だと思っています
    おお〜、そうなんですか〜♪
    それは、頼もしいですね!
    私は、遅まきながら、『パプリカ』の映像でヤラれてしまったんですが、この作品でも、再びヤラレてしまいました!
    すごくいい作品作るんですね〜。オドロキです。
    驚異の打率、ですか。フフフ・・
    それは素晴らしい〜!
    >今敏のクセが薄いですからね
    そうなんですか。この作品で、クセが薄いとは、他の作品がますます楽しみになってしまいました!
    確かに『パプリカ』はめっちゃクセのある作品で、そこが大好きだったんです♪
    アカデミー賞は、本当、取れそうですよね!サラっと凄いことをおっしゃってくださいましたが、本当に取ってしまうかもしれません!

  10. [email protected]適≫

    評価:80点
    私の「名づけ親(ゴッドファーザー)」は3人のホームレスでした――。
    クリスマスの夜、一人の捨て子をめぐって東京に《奇跡》が起こる。
    【監督】今敏
    【脚本】今敏/信本敬子
    【音楽】鈴木慶一
    【声】江守徹/梅垣義….

  11. 『東京ゴッドファーザーズ』を観たよ。

    シェアブログminiに投稿
    ※↑は〔ブログルポ〕へ投稿するために必要な表記です。
    「感心」はしたけど、「感動」は……、ごめん、なし。
    『東京ゴッドファーザーズ』
    英題:”Tokyo Godfathers”
    2003年・日本・90分

  12. こんばんは
    ハナちゃんが垂れ幕でふわりと降りてくるシーンが一番のお気に入りでしたわん♪
    ファンタジーが画ヅラ通り着地した感じで!
    今の日本のアニメーション作家でここまで「萌え」に抗ってる方も珍しいかと(笑)
    その代わり「物語ること」に腐心してるんですよね
    映画作品じゃなくて恐縮ですが今敏作品では『妄想代理人』がわたくし的にはツボでしたね
    『パプリカ』がアリならこちらも楽しめるんではないかと…
    『パーフェクトブルー』や『千年女優』は面白い!よりもスッゲー!が先に来る感じなんですよね
    美術設定で参加した『老人Z』も押さえとけば完璧かと(笑)
    きっとそのうち巨匠ってよばれるようになると思いますので今のうちから唾つけをね(笑)

  13. 東京ゴッドファーザーズ

    何を隠そう、アニメ好きでもあります。( ^ _ ^;
    オタクでもマニアでもなく、ただのアニメ好き。
    これはビデオで見ました。
    この監督あまり興味がなかったんだけど
    「千年女優」が思いのほか面白かったので。
    予告編も面白そうだった。
    面白かった。
    この監…

  14.  とらねこさん、こんにちは! TBありがとうございました。お礼が遅くなっちゃってすみません。
     この映画、私もクリスマスとは全然違う時期に観てしまいました(^^;) 絵の色合いにクリスマスの温かさが感じられる作品でしたね〜。

  15. みさま
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    >ファンタジーが画ヅラ通り着地した感じで
    なるほど!そうでしたね。
    あそこで、ファンタジーが、つまり奇跡が終わる瞬間を描いていた。
    あの瞬間にきっと、あの赤ん坊の起こしたそれまでの奇跡が、終結した、という一点を感じることが出来ました。うん、その通りですね!
    そこから先は、新年からは、日常に変わる・・つまり、ケとハレ。うん、これがあったからこそ、この物語はしまりましたよね!さすがみさまだな♪
    私、そういうこと語るのって大好きなんですよ
    ありがとうございます。
    >今の日本のアニメーション作家でここまで「萌え」に抗ってる方も珍しいかと(笑)
    へえ、そうなんですか。私、『パプリカ』のイメージで、萌えガール描く人かと思いました。いつもじゃないんですね。まあ、原作じゃ、全然ガールじゃないし、清純派でもないんですが(笑)
    『妄想代理人』、映画じゃないんですね。調べときます。

  16. 香ん乃さんへ
    こんばんは☆コメントありがとうございました。
    あ、香ん乃さんもやっぱりクリスマス時期を外してみてしまったのですねー☆
    これとか『ホリデイ』なんかは、クリスマス〜大晦日の時期に見たいですよね^^
    色合いのこだわり方、アニメには珍しいですよね。
    実写にはこういった色合いのものって結構あるのに、と思いました♪

  17. 真・映画日記『東京ゴッドファーザーズ』

    JUGEMテーマ:映画
    1月2日(水)◆673日目◆
    1日家でのんびりすごす。
    365日の内、1日くらいそんな日があってもいい。
    ……そうはいっても日記は書くし、映画も見る。DVDだけど。
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  18. 『東京ゴッドファーザーズ』’03・日

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