rss twitter fb hatena gplus

*

#27.春夏秋冬そして春

春夏秋冬、そして春参った・・・降参です。

久々に、「出会えて本当に良かった」と思える映画だった。
探すべき言葉が見つからない。
うまく言葉にならないので、友達に手紙を書くつもりで書きます。(ネタバレです)



季節って人の人生みたいだって思わない?
でも、“春夏秋冬そして春”・・・最後にもう一度春に戻ってくるんだよね。
なんだか輪廻転生みたいだな、なんて思うよ。・・・

この映画はまるで、大好きな絵本とか、昔話を本で読んだ時のような、懐かしい感じがあったよ。
その時は良く分からなくても、一つひとつのシーンが大事に胸に刻みこまれていて、
後で、ゆっくり胸のうちでそこへ戻ってくる感じ・・・。
きっと、あのボートを漕いで、あそこに辿り着くんだろうなって思う。

春

 

 

 

 

 

 

鬱蒼とした木立の中に、ひっそりと佇む、湖の上に、浮かぶお寺。
どこにもない場所を描こうとして、人の心のどこかにあるような、そんな場所に位置するお寺なんだと思った。

野に住む生き物の蛇と、川に住む生き物の魚と、そのどちらにも生きる両生類の蛙。
これらに悪戯心で、石をくくりつける幼僧は、誤りから殺生を犯し、
老僧から、「そのどれかの生き物が死んだら、心に石を一生背負い続けることになるだろう」、と言われてしまうのね。

死んでしまうのは蛇だったから、それは“野に住む生き物”ということになるんだろうね。
でも、この二人が生きるのは、水の上、俗世間から隔たれた場所、水に囲まれた“守られた場所”に生きているけれど、これはどういうことなんだろうなあ・・・、なんてボンヤリ考えていたんだ。
そんな春。

夏萌え出ずる若葉のように、青年に成長した僧。
自我の目覚め、性の目覚め、この世界全体に対する興味と好奇心から間違いと知りつつそれを犯し、俗世間へと旅立ってゆく。

かつて“心に石を背負う”と言われた少年が、恩師の御仏(みほとけ)を盗み出して出てゆく姿は、『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンみたいだな、って思ったりしたよ。
そんな夏。

秋秋、殺人を犯して、もう一度戻って来た成人になった男が、心に憎しみを抱えて戻ってくる。
静まらない思いと、煩悩と苦悩と、果てしなき怒り、嫌悪、荒れ狂う魂。

目と口と心を閉ざして自刃しようとする姿、般若心経を境内に刻み込む姿、
それと対照的に、湖のボート上で火に包まれ焼死する老僧の姿。
とても心に残った激しい秋。

そんな秋に一番心をもっとも揺さぶられたのは、人間の苦悩する姿が一番、私の心境に近いものだったからなのかもしれないなあ、なんて考えたよ。

冬壮年期、雪降り積もる風景が静かに心に沁みる冬。
無心に戻り、仏を彫る姿の成人僧。
悟り・・・。

私達の心の中に含まれているさまざまな要素、素晴らしい仏のような一面も、また醜い地獄のような一面も、飾ったり、偽ったりすることなく、あるがままを見据え、心を掘り下げてゆこうとする、そんな姿勢がこの映画を通じて、この監督の目線が伺えるように思った。

アリランの歌がしみじみと心に響く。
冬の山麓の中を、上へ上へと登りつづけようとする姿の僧は、私は、ヘミングウェイの『キリマンジャロの雪』の中で、後戻りせずに山頂を目指す豹を思い出したよ。

そして、再び、老僧と、幼僧。
同じ風景でないのは、刻み込まれた般若心経があること、山門の扉に書かれた寺の名前が違うものになっていること、それで、時間が経過していると分かる。

そして、山頂付近に在る仏の姿。
この世をそっと見守っているかのよう。
久遠実成(くおんじつじょう)の姿で現れた仏の姿。

春夏秋冬そして春@映画生活

 

関連記事

『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義

80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む

『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの

一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む

『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究

去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む

『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン

心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む

2,281

コメント(25件)

  1. 春夏秋冬そして春/キム・ジョンホ、ソ・ジェギョン、キム・ヨンミン、オ・ヨンス、キム・ギドク

    誰が言ったか存じませんが言い得て妙です『ちょっと邪悪なマルコメ君の成長物語』
    私の場合すっかりキム・ギドク監督を崇拝してしまってる感があります。毒されてると言ったほうがいいのかも。物語の内容については全く耳に入れないように気を付けていたんですが、映像はち….

  2. 春夏秋冬そして春@ル・シネマ

    まず水面に浮かぶ庵。以前、予告を見たときにそれだけで劇場観賞を決めた。移り変わる四季の中で、庵は時に悠然と佇み、時に流れに身を任す。その四季を人間の成長に見立て、一人の業を負う男を追う。稀代のアーティスト、キム・キドク監督は諸行無常を説く。
    庵の中、石…

  3. 春夏秋冬春、改めて思い出してみると、
    どれも印象的でテンションが不変だなぁとよみがえります。
    「レ・ミゼラブル」とか「キリマンジャロの雪」とか引用してくるあたり、
    教養の高さが垣間見えますね。

  4. 映画『春夏秋冬そして春』

    原題:Spring, Summer, Fall, Winter… and Spring
    欲望、執着、・・・そして殺人、業深い男の、少年から壮年が、激しく季節になぞらえて綴られる。奥深い山間の湖に浮かぶ山紫水明の寺・・・。
    季節は春、和尚と暮らす幼い少年がある日、小動物を虐待して薄ら笑…

  5. 現象さんへ
    こんばんは★コメントありがとうございます!
    そうですね、どの季節もとっても印象深かったですよね。
    本当にどのシーンも無駄がなくて。素晴らしかったなあ。
    教養の高さ・・・と言われても一度自分の文を読んでみたら、ヘミングウェイがヘミングウィになっていました。がーん。
    そこはツッコまないでいてくださってありがとうございます。
    ウィーって!

  6. 再び釣られてみました(笑)
    着々とギドク中毒(韻踏んでみましたよw)への道を歩まれてますね〜
    映画監督というより映像作家
    で、やぱしル・シネマか恵比寿ガーデンシネマなかほりなんですよね。決してシネパトスやトーアな感じではないという(爆)
    静謐と激情、業と悟り…絵面で魅せ切るセンス非凡なれどコレって欧州日本受け米国韓国総スカンなんじゃないかと…や、まぁなんとなくの感覚だけなんですがね
    作品製作続けられる環境は維持してって欲しいものだ、といらぬ心配を…
    次あたり『悪い男』如何ですか?
    コレ女性が観たらどんな感想なんだろって興味あるんですよね
    それにしても…
    『ビジターQ』とは食べ合わせ悪すぎなんじゃないかと…お腹壊してないですか〜(笑)

  7. 深いな、とらねこさん。脱帽です。
    予告編は、観ていたのですが…。この監督さんの映画は、いつかじっくり観賞したいと思います。
    とらねこさんは、DVDを購入して観てるのですか? レンタルですか? レンタルだと観たいものは、在庫してないことが多いんです。「観たいもの」が、大衆的ではないのかもしれないのですけど。仕方なく…というのも変ですが、どうしても観たいものは、DVDを購入してしまいます。廃盤になっているものがあるとがっかりです。

  8. みさま
    こんばんは〜♪再び釣られていただきありがとうございます☆
    >着々とギドク中毒
    そうなんですよ・・ギドクマンダラのその前に、ギドク中毒の道を着々と歩んどく、
    て感じですw
    無理やり韻踏む訳じゃないんですが、“孤独”というかコミュニケーションのスレ違いとか、そういうのもテーマとしてあるのかなって思ったりする最近です。
    >ル・シネマ、恵比寿ガーデンシネマなかほり、パトスとかトーアではない
    ハハハ・・最近ガーデンシネマちょっと自分的にはイマイチなんですが。ユーロも頑張ってますね♪
    >欧日ウケ米韓総スカン
    本人も韓国では「自分の作品は誰も見ようとしない」、なんて言ってるんですよね(苦笑)
    引退ってどうなるんでしょう?日本に本当に来るんでしょうか。それともヨーロッパかな。
    日本において得られることって、日本の映画界にはあっても彼自身にあるのかどうなのか、って思います。
    >次あたり『悪い男』如何ですか?
    あ、もう手元に違う作品があるんですよ。『コーストガード』なんですが。
    でも、『悪い男』も見る予定です^^
    そうなんですか、女性目線が嫌ァ〜な感じの作品なんでしょうか・・焦っ。
    でもちょっと楽しみ!?
    >食べ合わせ悪い
    食べ合わせは、最悪で本当、お腹壊し気味でした(*_*)
    DISCASって2枚一組なんですよ。リストにあるもので今ちょうど借りれるものを上から順番に勝手に選ぶので、ほとんどお任せモードなんですよ。『うつせみ』も『サマリア』も去年の12月から一番上にあったんですが・・・。
    どーゆーカップリングじゃい!って感じの今回でした^^;

  9. あかん隊さんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
    そして、お褒めの言葉もありがとうございまっす☆
    うん、今回は自分のツボにピタリとハマった、一言では言い尽くせないほど好きな作品になりましたよ。まだまだ長く書けそうだったのですが、とりあえず最近は文の長さを一定に保とうと思って、これ以上は控えてしまいました。
    あんまり長くっても、読む方の方が返って大変かな、と考えてしまって。
    あかん隊さんも、よろしかったら是非、この作品観てくださいまし☆
    じわーっと心に沁みると思いますよ
    私、あんまりDVD購入ってしないんですよね。買ってしまうと、安心して見ないことの方が多かったりして
    借りるのって、探すのが大変なんですよね。
    自分はもっぱらDISCASだったりします。おかげで、最近借りるのに時間をかけずに済んじゃうんですよね。

  10. 映画「春夏秋冬そして春」を観て

     水・・・魚・・・青・・・こんなにも美しく描けるのは、キム・ギドク監督しかいないのではないか。

  11.  とらねこさん、TB&コメント、どうもありがとうございました。
     この作品、キム・ギドク監督作品の中では、比較的、残酷シーンが少なくて助かりました。
     現象さんトコにそうコメントしたら、現象さんいわく、この映画の、老僧の自殺シーン、氷が割れて女の人が・・・のシーンが、ショックだったらしいです。現象さんは、残酷で痛そうなシーンより、「死」そのものが怖いそうです。苦手な描写は、人によって違うんだな、と、思いました。
     この作品、ありえない美しさだと思います。

  12. とみさんへ
    こんばんは☆コメントありがとうございます!
    そうですね、残酷シーンというよりも、山あいの素晴らしく美しい風景に心惹かれるものがありましたよね。
    私もここで描かれた死は、それぞれに意味のある死だったと思います。
    私も、とみさんがおっしゃるように、老僧の死の理由が分かりませんでした。
    ギドクのインタビューでは、老僧の死は、自殺というよりも、自然死に近いものだ、と言っていました。
    自殺しようとしたのは主人公であったけれども、老僧の死は違う、というのです。
    “消滅してゆく魂”なのかな、と捉えてみました。
    きっと、今分からなくても、だんだんに理解に近づけて行ければいいなと思います。

  13. あにょん。
    なんだかんだいって、これがギドクのmyベストでっす。
    (女もの2作は未見)
    カエルも出てくるしー。
    詩的で美しいのに4コママンガちっくなおかしみがあり。

  14. かえるさんへ
    はしむにか〜☆コメントありがとうございました!
    かえるさんも、この作品が、ベストでいらっしゃるんですね!
    私は、まだ3作しか見ていないのですが、さすがにこれを越すのはちょっと難しそうだなあ、と予想しています☆
    4コマ漫画。うぬ〜
    かのんさんが“邪悪なマルコメ君の成長記”って言ってらして、思わず爆笑してしまったのですが、かえるさんの“4コマ漫画”発言も笑ってしまいました〜☆

  15. 春夏秋冬そして春

    (英題:SPRING,SUMMER,FALL,WINTER…AND SPRING)
    【2003年・韓国/ドイツ】DVDで鑑賞(ともや評価:★★★★☆)
    「サマリア」のキム・ギドク監督が、山奥の湖の湖面に佇む小さな寺を舞台に、ひとりの男の波乱に富んだ人生を5つのエピソードで語った美しく静謐なドラ…

  16. こんばんは、とらねこさん♪
    キム・ギドク監督いいですよね〜。
    空気や雰囲気、絵の切り取り方がステキ。
    早く最新作の「弓」が見たくてしょうがないです。

  17. ともやさんへ
    こんばんは〜♪TB、コメントありがとうございました☆
    私この作品、すっごく好きなんです。
    凛と張り詰めた空気感がたまりませんね。
    『弓』は今DVDで最新作で出ましたね♪
    3月公開の『絶対の愛』も見たいです!

  18. DVD“春夏秋冬そして春”

    春夏秋冬そして春/オ・ヨンス
    ¥3,941
    Amazon.co.jp
      
      山間の湖に浮かぶ、ほんの小さな寺に
      和尚と弟子の小坊主が暮らす。
      時が流れ、年頃の青年へ成長した愛弟子だが
      病気養生に訪れた少女と結ばれ、寺を出てゆくことに。
      そして彼…

  19. こんにちは!
    今頃のコメントですみませんが、
    この作品も本当に大好きでした。
    まだ観ていないギドク作品があり、観たくてウズウズです。笑
    突然すみませんが、とらねこさんにバトンがあります♪
    もーし良ければ、お願いします(^^)

  20. sum-vaさんへ
    こんばんは〜♪TBとコメントありがとうございました。
    私もこの作品、すごく好きなんですよ〜♪
    sum-vaさんが見たなんて、嬉しいですね。
    これはギドクが一段階上のレベルの階段のぼりを始めた、というの気がして。
    怒りではなく、人間の優しさを感じるんですよ・・・。
    バトンありがとうございます!わーい、なんだろう?^^
    早速、見に行かせてもらいますね★

  21. 独断的映画感想文:春夏秋冬そして春

    日記:2007年11月某日 映画「春夏秋冬そして春」を見る. 2003年.監督:キム・ギドク. オ・ヨンス,キム・ジョンホ,ソ・ジェギョン,キム・ヨンミン,ハ・ヨジン.ネタバレあります!! とある山の

  22. とらねこさんこんばんわ.
    TB有り難うございました.
    キム・ギドク監督は「サマリア」入れてまだ2作目です.
    韓国映画には苦手意識があったのですが,キム・ギドク監督はいわゆる韓国映画と全くスタンスが違うのですね.
    この監督のお薦めの映画があったら,是非ご紹介いただきたいと思います.

  23. ほんやら堂さんへ
    こんばんは〜♪こちらこそ、TBありがとうございます。コメントもわざわざありがとうございました。
    そうですね、私も、どちらかというと、韓国映画にはいまだに苦手意識があったりします。
    でも、キム・ギドクは、普通の韓国映画とはまるっきりテイストが違うんですよね。
    オススメですか?・・・実は、この作品がオススメだったのですが・・。
    では、『悪い男』を今度挑戦してみませんか?^^w

  24. 春夏秋冬そして春:「それでいいじゃないか」的な肯定感に満たされる、個人的記念碑のような作品

    ★監督:キム・ギドク(2003年 韓国・ドイツ作品) DVDにて。 大阪のテアトル梅田で見て以来、3…

  25. 春夏秋冬そして春

     コチラの「春夏秋冬そして春」は、キム・ギドク監督の9作目となるR-15指定のヒューマン・ドラマです。周りを山に囲まれた池にぽつんと浮かぶように建っている小さな小さなお寺を舞台に、タイトルのままストレートに人の一生をうつろいゆく四季に重ね合わせて描いた作品で….




管理人にのみ公開されます

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)


スパム対策をしています。コメント出来ない方は、こちらよりお知らせください。
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...

【シリーズ秘湯】乳頭温泉郷 鶴の湯温泉に泊まってきた【混浴】

数ある名湯の中でも、特別エロい名前の温泉と言えばこれでしょう。 乳頭温...

2016年12月の評価別INDEX

年始に久しぶりに実家に帰ったんですが、やはり自分の家族は気を使わなくて...

とらねこのオレアカデミー賞 2016

10執念…ならぬ10周年を迎えて、さすがに息切れしてきました。 まあ今...

2016年11月の評価別INDEX & 【石巻ラプラスレポート】

仕事が忙しくなったためもあり、ブログを書く気力が若干減ってきたせいもあ...

→もっと見る

【あ行】【か行】【さ行】【た行】 【な行】
【は行】【ま行】【や行】 【ら行】【わ行】
【英数字】


  • ピエル(P)・パオロ(P)・パゾリーニ(P)ってどんだけPやねん

PAGE TOP ↑