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#10.ハピネス

ハピネスみんな変態。この世はみんな変態。
一皮剥けば、誰しも変態だ!
ハピネス・・・幸せなんて、そんなものどこにもありゃしない。
・・・参りました。みんな、出て来る人出て来る人、風変わりで一癖ある人たちばかり。
’98年、カンヌ映画祭批評家賞受賞。




ストーリー(以下、ネタバレで進みます)・・・
三女のジョイ(ジェーン・アダムズ)は恋人アンディ(ジョン・ロヴィッツ)に別れ話を切り出すと、「クソなのは俺じゃない、君だ!」と手酷く罵られる。
その言葉に傷ついたまま、長女トリッシュ(シンシア・スティーブンソン)に会うと、トリッシュには、「あなたは不幸な人生を送ると思ってたけど、良かった、まだ希望を捨ててないのね。希望があるっていうのはいいことよ」と言われる。


そんな長女トリッシュの夫、精神科医のビル(ディラン・ベイカー)は、実は小児愛者。自分の息子、ビリー(ルーファス・リード)の友達を家に呼び、睡眠薬を盛って犯してしまう。
次女ヘレン(ララ・フリン・ボイル)の隣に住むアレン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、ヘレンを恋しているが言い出せず、イタ電をかけては日々悶々としていた。・・・


風変わりで奇妙な人たちの群像劇。
人によっては、不快に思う人もいるのでは。どの人もどの人も、見ていて不快さを感じる作り。
ラストに至って、決して幸福感を見出すことは出来ないながら、否定しているわけでも、肯定しているわけでもないような、微妙な空気感のみが残るのだ。

トッド・ソロンズ監督によって切り取られた、この世界は、一体なんなんだろう・・・。

一番の筆頭は、肥満の会社員アレン(フィリップ・シーモア・ホフマン)と、ビル(ディラン・ベイカー)だろう。
アレンは、やたらと白い肌に、いつもいつも汗を書いていて、「fxck,fxck・・・(以下自己規制)」などとつぶやきながら、イタ電をかけまくって「ヤリたい・・・」と心気症気味で、気持ちが悪いこと、この上なし。オエ〜〜〜〜。
そのくせ、太った醜い女性に言い寄られると、跳ねつけてみたりして。


ビル(ディラン・ベイカー)も、ぞわぞわするほど気持ちが悪〜〜〜い!!!
マジメな顔しているのに、家族全員に睡眠薬を盛り、寝静まったところで、自分の子供の友達、ジョニーを犯し、逮捕されてしまう。
「イッたことがない」と相談をする息子に対し、「自分でやってみせようか?」などと言っている内は、まだかわいい方だった。これまた、不愉快な人物、この上なし。


だが、様々な不愉快さを、わざと煽るかのような人物描写の中でも、ひときわ私を不快にさせたのは、もっとも“ノーマル”な長女トリシュだった。


妹のジョイに、親切そうに「アナタって、貧乏くじばっかり引くから・・・」とか、
「キャリアもなく、みじめそのものに見えて、まだ希望があるのね」「希望があるのはいいことよ。良かったわ、本当に」なんて、親切面して人を平気で落ち込ませるセリフを吐いて、その罪悪感すら感じていない。
自分はマトモだと思っていて、自分の狭い価値判断の物差しで人を見下して、平気な顔をしているのだ。


極端に人の気持ちに鈍感だから、自分の夫が異常さを隠し持っていても、全く気づかず、自分だけは幸せだと信じて疑っていない。
こういう人って、自分の周りを考えてもいたなあ、なんて思い出して、更に嫌な気持ちになってしまった。こういう人に限って、人を傷つけて平気な顔をしているんだよね。
だけど、こういう人に限って、想像力に欠けていて、自分の物差しでしか考えられないから、その狭い中で、ケロリとしていたりする。


以下、強烈なネタバレですが:::::::::


 


 


最後、少年ビリーの初の射精で終わるこの物語。
性とコミュニケーション。人生の続く限り、人間のいる限り、それらの問題は終わりはないってことでしょうか。・・・
性行為と、その嗜好性と、人間。
も・・・考えれば考えるほど、これほど面倒なものはなく、切っても切れないこの理不尽な循環。ノーマルもアブノーマルもセックスも人間も、もう全て面倒くさいこの世だ。


 

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コメント(23件)

  1.  とらねこさん、おはようございます♪
     この映画、数年前に試写で観たんですが、なぜだか忘れられません。決して好きだったわけではないのだけれど、なんとなく面白くて、やたら含み笑いしながら観ていたことは憶えていて……。おっしゃる通り、微妙な空気感が漂っている作品でした。

  2. 香ん乃さんへ
    おはようございます〜♪コメント、ありがとうございます!
    この誰もコメントしてくれなそうなところへコメントしてくださるなんて、とっても嬉しいです!
    この映画って、アメリカでは特に批評家筋に、とても人気が高かったようなんですよね。
    でも、好き嫌いがはっきり分かれる作品のようです。香ん乃さんは、なかなかに楽しめたようですね♪

  3. お〜!毒虫野郎ソロンズ作品に手を出しましたか
    もうね「お前ぜってぇースクスク育ってないだろ!」てな問題作連発の異才ですよ…
    「世の中の欺瞞を暴く!」とかって声高じゃないとこがまた…大好き♪
    ところで、このホフマン強烈だったでしょ
    しばらくは彼が他作品で何の役やってても「あ、イタ電オナニストだ」て電話のシーンある度にドキドキするという後遺症に悩まされましたから(笑)
    >こういう人に限って想像力に欠けていて〜
    む〜想像力の欠如というよりそういう発想自体がそもそも無いんじゃないかとも思うんですよね
    「2次元世界の住民は3次元という概念を知覚できない…球体の通過を例にとると彼らには点が徐々に大きな円になり小さくなり最後また点になるという事象としてしか把握できない。どんなに事細かに説明しても球体の理解には至らない」という認知学関連の一文を読んだ際に妙に納得しちゃったんですよね…

  4. みさま
    こんばんは!コメントありがとうございます。
    を!みさまはこの監督、お好きだったのですね☆
    >毒虫野郎ソロンズ
    うぷぷ・・・ウマイ表現♪
    PSホフマン、本当強烈でした・・・あああああ気持ち悪っ!!
    『カポーティ』でPSHの評判がウナギ昇りすればする程、なんかこの作品について言いたくなる気持ちが分かりましたよ・・・。電話のシーンの度にドキドキって・・・ぎゃはははは
    うぬぅ。“二次元世界の住人”とさえ呼びたくなる人達、ですか。それすごい皮肉な表現ですね。球体の通過を取った例は、物体の移動という運動の概念を把握していない、という訳ですね。
    確かにそう言いたくなる人っているかも。認知レベルの違い、か・・・。
    ハハハ!現実世界が3次元であることを考えてみて、それを二次元世界の住人と例えて言うなんて、その認知学者ってすごい皮肉屋ですね^^;

  5. ハピネス

    「ハピネス」を観た。
    アメリカのニュージャージー州郊外で、ごく普通の中流家庭に育った三姉妹。だが町の住人たちの心の闇が露呈しはじめた時、彼女たちが信じて疑わなかった“幸福な日常”は少しずつ崩れてゆく。
    こいつ 

  6. あっ、変態映画だ(爆)
    ホフマンがハマりすぎてて怖かったです。それ、素じゃないの?みたいな(笑)
    TBさせてもらいますー。

  7. >この誰もコメントしてくれなそうなところへコメントしてくださるなんて、
    そんなことはありません。この映画,わたしのオールタイムベストに入ります。数少ない所有DVDの一枚。
    トッド・ソロンズはとくに好きな監督のひとりですね〜。この人の映画観ると病めるアメリカを実感するんですよ。
    一昨年になりますが,誰もベストに入れてないソロンズの新作「おわらない物語」がマイベスト1でした。

  8. おひさしぶりです。
    この映画、トッド・ソロンズの作品の中では
    いちばん密度が濃かった気がします。
    フィリップ・シーモア・ホフマンも強烈!
    『おわらない物語 アビバの場合』も少しオススメ。

  9. baohさんへ
    こんばんは★
    お!baohさんもこれ観られたのですね。これ、好きな人が多いのが、意外で、最近の中で一番の驚きでした!
    PSH最高にハマリ役でしたね〜♪

  10. bambiさんへ
    おはようございます〜★コメント、ありがとうございます!
    トッド・ソロンズ監督のフィルモグラフィーを調べていて、『終わらない物語〜』があったのを見て、「あ!これ、メモしてあるけど、なんでだっけ」と思ったのですが、bambiさんにコメントをいただいて、おととしのベストに書いてあったのを思い出しました
    メモをするのはいいけれど、メモの仕方が悪いのは、考えものですね
    bambiさんは、そんなに好きな監督さんだったのですね!うーん、驚きました。オールタイムベストなんて、それって、かなりの高評価ですよね!!

  11. えいさんへ
    おはようございます〜★コメント、ありがとうございます!
    えいさんにとっても、これ、評価の高い作品だったのですね!
    PSホフマンは、本当に強烈でした・・・夢に見そうで怖いです
    『カポーティ』でも電話のシーンは、よく使われていましたよね(笑)
    しかし、この作品が好きな方が多いのに、大変ビックリしましたよ〜!!

  12. あ,「おわらない物語」より先に「ウエルカム・ドールハウス」を観てくださいませ〜。
    おわらない〜は,ウエルカム〜の主人公がちょっと変わった形で登場します(続編というわけではない)。
    このひねくれた設定がソロンズらしいのですよ〜

  13. bambiさんへ
    bambiさん、戻って来てくださり、ありがとうございます〜♪♪
    『ウェルカム・ドールハウス』は、『おわらない〜』の前に見るべき作品なのですね!ん〜。
    そこまでbambiさんをトリコにする監督なのですか・・・うふふ。
    変態への賛歌、でもなく、排斥でも当然なく、そういったことを批判なしに“そのままに描く”“そして人生は続く・・・”といった感じの作風の監督さんなのでしょうか、この作品を見て思っただけなのですが、面白い人なんですね!
    bambiさんも、みさんも、えいさんも、蔵六さんも好きなんて、この監督は幸せものだぁ〜。

  14. 再び、どもです
    >この監督は幸せものだぁ〜
    いぁ、う〜ん…
    わたくしが行ったときはいつも映画館空いてるんですよね、ソロンズ作品…
    まぁ、そりゃそうだと思わなくもないんですが(笑)
    でもコンスタントに撮ってるし日本でもスルーされずにちゃんと公開されてるから根強い人気あるんでしょうね
    マイナスとマイナス掛けたら…
    え?もっとマイナスでしょ?とあっさり答えてくれそうな、ダメ人間業(カルマ)地獄巡りの語り部
    きっと座右の銘は「”負”のない将棋は負け将棋」だと思いますよ(笑)
    チアリーダーとフット部キャプテンが正義の国でこんな作品ばっか撮ってるとこがまた…大好き♪

  15. みさま
    おはようございます〜★
    この監督、一部の人に大人気なんですね。でも、一般的とはとても言いがたい感じなのですね。
    >チアリーダーとフット部キャプテン
    げげげwwwそうなんですかぁ・・・うがあ。
    体育会系の人がどんな育ち方をしたら、こんな作品がひねり出せるようになるんでしょうね?
    うふふw
    それを聞いて余計面白くなってしまいました。
    >ダメ人間業(カルマ)地獄巡りの語り部
    みさまの破壊力を持ったボキャブラに、いつも感心してしまいます。みさまのお仕事はきっとコピーライターじゃないかなあ・・・

  16. タイトルからしてシニカルで、ニヤリと笑いながら楽しんで見てしまいました。
    好きですねぇ〜
    この作品も、シーモアさんの演技も声も♪
    >風変わりで奇妙な人たちの群像劇
    彼らを見て、「あの人達って不幸。 それに比べれば自分は幸せ」なんて思ったりしたら、その途端に「そう思ったアナタも不幸だね」と監督に皮肉たっぷりに言われそうな気がします。
    と言うか、どんな感想を抱こうとも、監督の皮肉からは逃れられないような気が・・・
    そもそも、この作品を見ようと思ったその時点で、監督の罠にはまってしまったじゃないかと思う哀生龍です(汗)

  17. ハピネス

    長女トリッシュ(シンシア・スティーブンソン):3人の子供と精神科医の夫と幸せに暮らしている。つもりだったが… 次女ヘレン(ララ・フリン・ボイル):美しい人気小説家。しかしスランプ気味で、言い寄る男との上っ面だけの関係にも寂しさを覚えている。 三女ジョイ(ジ…

  18. 哀生龍さんへ
    わーい♪哀生龍さんも、これ見ていらっしゃったのですね☆
    しかも、PSH目当て!哀生龍さんも、PSホフマンが好きだったのですね♪嬉しいです!これは、ホフマンとしては、マストな作品でしたよね☆いろんんな意味で(笑)
    >それに比べれば自分は幸せ
    これ、全く自分はそう思えませんでしたが、確かにそう思う人もいるかもしれませんよね。
    >どんな感想を抱こうとも、監督の皮肉からは逃れられないような気が
    まさに、そこですね。すっかり、アナタも私も、背中合わせに不幸せです(爆)

  19. ハピネス

     コチラの「ハピネス」は、ブラックなユーモアに溢れるヒューマン群像劇です。登場人物は皆、いわゆるイタイ連中。心に闇を抱え、その闇を隠し日常生活を送っているのですが、その闇にスポットを当てあぶりだしていきます。
     監督は、「ストーリーテリング」、「おわら….

  20. ハピネス

    「ウェルカム・ドールハウス」('95)[http://blogs.yahoo.co.jp/jkz203/5481088.html?p=1&pm=c 「ストーリーテリング」]('01)などの作品で、結構支持の多いインディペンデンスの'''トッド・ソロンズ監督'''作品です。199…

  21. ハピネス

    映画の取り扱い品目が「小児愛・不倫・
    マスターベーション」と来たら、アナタは
    逃げる人だろうか?
    本作の監督トッド・ソロンズは我が国には
    これを入れてもまだ4作品しか紹介されて
    いない。この映画ほど普段ひそひそ話しで
    語られる内容の類を真摯にときに辛辣に

  22. このような映画について語りしゃべりたいけれど
    記事UPしても、なぜにか拙宅には木枯らし
    吹いてペンペン草が生えそよぐのですぅ〜。
    覚えていらっしゃいますか、歌う
    映画おばさんことviva jijiでおます。^^
    新年にふさわしい(どこがじゃ)TB持参
    いたしました。
    とらねこさんチは本作にもこんなに
    ゲストさんが楽しそうにお話しなされて
    実に!うらやまし〜〜い!!(泣)
    っということでほんとは隠れたるおもしろ
    映画を観ることを至上の喜びとしているはずの
    私め、今年はちょくちょく寄らせて下さいね。
    (ぺこり)

  23. viva jijiさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    ははは、羨ましがってくださって、ありがとうございます。私もちょっと嬉しいです。
    ま、この手の変態さんが大勢お出ましになる映画って、実は私は、専門というか・・ちょっと得意だったりするものですから(恥)
    逆に、真面目な映画を真面目に記事書いても、皆さんあんまりリアクションしてくれなくて。
    そういう時ちょっと悲しかったりするんですよ・・
    そうですね、是非とも、今後も何かの折に、どんどんお話させてくださいまし〜
    どうぞどうぞ、よろしくお願いしますでっす!




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