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87.おんな極悪帖

おんな極悪帖今月の渋谷シネマヴェーラで行われている、“妄執、異形の人々”シリーズ。
カルトでモンドな素敵に濃い作品シリーズ・・・と、言うことですが。
実は私、古い日本の名作群を、全然見たことがないのです。名作というより、この特集の作品群は怪作ぞろいなのかもしれませんが(笑)

だけど、江戸川乱歩の原作だったりするなら、それぁ是非とも観てみたい♪
と、いうことで、今月は興味あるものぐらいは、足を運ぼうかなぁ・・・なんて考えています。このラインナップの中で、観たことがあるのは『極道恐怖大劇場 牛頭』ぐらいだし・・・
・・・と、言う訳で行って来ましたは、谷崎潤一郎原作『恐怖時代』より、『おんな極悪帖』・・・




ストーリー・・・
櫓(やぐら)下の娼婦の時代から、次に、河原の芸者になり、今は、春籐家家主の靭負(岸田森)の下屋敷の妾になり、“お部屋さま”(この屋敷の城主)へと成り上がった、お銀(安田道代)。
体を使って、まさに底辺から成り上がった女。そして今も、悪事の最後を飾るとばかりに、企み事をしている。


自分の住む下屋敷は言ってみれば“妾の屋敷”。本妻の住む上屋敷は、政治事など、表向きの用立てに使われ、自分の下屋敷に仕える使用人も、“出世に見放された”人のようで、こちらに左遷されるのを不名誉とされている。


その下屋敷に左遷された一人に、若く絶世の美男と噂の高い、磯貝伊織(田村正和)がいた。
彼は影では下屋敷の女中として幅を利かせる、お銀の悪企みの片棒を担ぐ梅野(小山明子)と通じているものの、彼女は10も年上。梅野は30を過ぎて、初めて恋に落ちたこの年下の恋人に、年甲斐もなく熱を上げていた。


お銀の狙う大博打の大悪事は、上屋敷の本妻を、男の子を産む前に殺すことだった。お銀の、設けた2歳になる男の子、照千代を女の出世の道具に使って、春籐家の世継ぎの母として、地位を確固たるものにしようとの考えであった。


医師の玄沢(げんたく:佐藤慶)に一飲して致死に至らしめる毒を頼む、お銀であったが、実はこの玄沢とも昵懇であった過去があり、更に彼女お銀をここまで盛り立てた、春籐家家老の地位に登り詰めた武士とも通じていて・・・


’70年、池広一夫監督作品の、時代劇。アダルトテイストではあるが、とても完成度の高いものだった。
ドロドロとした愛憎模様の、ドラマチックな作品。
女一代の立身出世を図る、愛欲にまみれた女の極悪一代記。

この映画、セリフが素晴らしく無駄がなく、簡潔な中に表現されていて、84分という短い中に、多くの情報が凝縮され、且つまた登場人物の様々な思惑がギュッと詰まっている。
むせ返んばかりに、人びとの欲望剥き出し。出世欲・愛欲・金銭欲・・・
谷崎潤一郎らしいと言えば、らしい。


あまりこういったものに興味がない自分には、正直クラクラしたが、それでも、下劣な覗き根性というのは誰しも持つもので、この圧縮された欲望のカタマリである女の、人生縮図に魅入られ、十分、楽しむことができた。


この女の口癖であった、
  “地獄 極楽 覗きからくり”


冒頭に出てくる無間地獄の絵巻が、この言葉に象徴されていると言える。

煩悩多き娑婆世界において八正道を貫いている、とは言えないにしろ、臆病者ではあるが決して罪を犯しはしなかった、奥の坊チンサイが、業火を免れたのはせめてもの幸い。


ところで。このお銀を演じた、安田道代、とっても綺麗な人だった。
笑い方なんかも、頬の筋肉を少し溜めて笑い、美人の素直な笑顔というより、ズルそうな笑い方で笑う。この映画の役作りのためだと思われるのだが、上品さを出さないように、あくまで下劣そうに演じているのが天晴れだった。
化粧も猫目風で、役柄に対しとても様になっている。


また、磯貝伊織を演じた、若い美侍の田村正和。
田村正和って、若い頃はこんなにカッコ良かったんですねー。
ビックリしました。そして、見とれた。
お銀がとても綺麗なんだけれど、この田村正和の妖艶な美しさには、遠く及ばない感じ。
声は今とまったく同じあの“田村です”なのに、この映画の若い頃の田村正和は、本当に美しい。全くもって素晴らしい!
画像を一心に釘づけにする、魔力すら持っている。
私は古畑任三郎シリーズが大好きで、面白いオヤジと思っていましたが、あんなに若い頃カッコ良かったとは知りませんでした。惚れたかも。


 

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