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※7.『きらきらひかる』

1きらきらひかる作/江國香織


きらめくセンスの、痛々しくて切ない文達・・・




ホモで恋人もいる男、睦月と、アル中女の笑子(しょうこ)は、全てを受け入れて結婚したはずだった。
それは、“ごっこみたいに楽しくて、気ままで都合のいい結婚”。
その一風変わった結婚の姿は、自由で、読んでいて羨ましくなる。


睦月は心優しいホモで、仕事から帰って来たら、笑子に夕飯を作ってくれたりする。お客さんが来たら、クラッカーの上にオイルサーディンなんて載せたりして、夕食はドーナツにコーヒーだったりする。
睦月は「あまり嬉しくないなぁ」なんて言いながらもコーヒーを注いでくれるので、喜んでフォークとナイフなんて準備しちゃうのだ。


・・・え!?ちんぷんかんぷん?
ごめんね。私この世界に入り込み過ぎて、同調しすぎて、とてもじゃないけど、冷静にこの小説について論じたりなどは、きっと出来そうにない。・・・。


例えばだけど、「ハッシュ!」て映画知ってる?
ホモ男二人と女の子が同棲する、て映画。あれね〜。あれ面白かったっしょ!?うんうん、私も好きだよ!
で、この作品は、似てるんだけど、男と女が偽装結婚して、女がね、悲しいかな、男をマジ片思いし始めちゃうのね。
そんなことから、二人の関係に歪みや不協和音が生じてくるようになる。で、そういった事が、本人、辛くてたまんない訳なんだけど、言えない訳よ。
睦月は優しいし、自分を包んでくれる。それなのに、そんな優しい睦月を傷つけたりしちゃう訳だ。


相手の有り難みを感じると言うより、それに埋没して自分が見えなくなってるからね、だから自分も傷つくし、相手も傷つけたりしちゃうんだなぁ・・・。
だけどそんな事をね、江國さんは、文でもって表現するんだ、隠喩で、直喩で、ピュアで痛々しくて、美しいー文ー文でもって突き刺してくるわけ。
さすが児童文学から来たそうで、文の一つ一つが色々な物を内包していて、サラッと気軽になんてとても読めない。


例えば、
>闇にのりたまのような星空がひろがった。


>春の夜はあたたかくて柔らかで、羊羹のようだ、と僕は思った。


すごい直喩だよね・・・。美しくて、力強くて・・・いややはり直喩法はガツンと来るね。
ヘミングウェイが「丸太のようにぐっすり眠った」とか「スペードのように黒い肌をしていた」とかいう表現したことあるんだけどさ・・・まあいいや。
で、そんな表現は、笑子の気持ちを、睦月の気持ちを、表現するために使われている。この小説は二つの声が使われててね、一つは笑子が一人称の時と、もう一つは睦月の時と。そう言った訳でスレ違ってく有様が、見て取れるんだね。「冷静と情熱の間」なんかはそれをもう一人の作家と二人で2冊を出したりしてるんだけどさ、元案はこっから来てるね。いや私はまだそっちの“blu”しか読んでないから、今回江國さんは初挑戦なんだ。読んどきゃ良かった、本当。


とにかく言えるのは、眼鏡をくいっくい上げながら、「この〇○は××を表していて・・」とか言ったりしちゃう人は合わない小説みたい。
絵見ても、ホラいるじゃない?「この作品は〇〇世紀の後期印象派で、××の流れを汲んだナニナニ・・・」みたいな事しか言わない、頭だけで物を考える人。
それとは逆に、「色がキレイだなあ〜」「見ていて嬉しくなってくるな〜」とか、素直に絵そのものを楽しめる、感覚を感じ取れる人でないと、この作品は楽しめないんじゃないかな。
人が小説を選ぶと言うよりも、この作品に関して言えば、小説が人を選ぶと言う感じ。分からない人には全然分からない小説でしょうね。
でもきっと分かる人には、一つ一つの文が光っていて、突き刺してくるのを感じるはず。痛くて痛くて・・・本を閉じては泣いて、また開けては泣いて・・・みたいに、自分の事のように痛くて、どうしたらいいか分からなくなったけど。
でもとても、夢中になった。
この作品が好きなんて言ったら、私ってマゾなんかな、ってくらい、痛々しくなったけど・・・でもやっぱり、忘れられない小説になったのだから・・・。


 

2006/07/20 |

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コメント(8件)

  1. こんばんわ!
    とらねこさん、帰ってきました。ブログ・・・どこから手をつけたらいいのか分かりません(泣)
    睦月のネームの由来になったこの小説。とらねこさん、読んだんだね・・・。とらねこさんの記事を読んでいてうなずく部分がたくさんありました。
    睦月は、この小説を10年くらい前に読んで、いまだに一番好きな小説です。上手く言葉には出来ないけれど・・・あの痛々しいほどの切なさや、涙が出るほどの優しさに溢れたこの世界観がずっと心に残っています。とらねこさんも同じように感じてくれて嬉しいです。江國さんはたくさん小説を出していて、そのほとんどを読んだけれど・・・やっぱこの小説が一番良かったな。
    ≫きらめくセンスの、痛々しくて切ない文達・・・
    文頭のこの一文にガッツリやられました。とらねこさんの文章もまさにきらめくセンスづくしだと思います。

  2. 睦月さんへ
    初めはやっぱり、ちょっと慣れないと変な感じがしたよ(照)
    だって睦月って言ったらもう、私にとっては睦月さんだからさ*^^*
    PCで入力する時も、なんか照れてしまったね(笑)
    でも、本当すっごくいい文書くんですね、江國さんて。もう、やられまくりの、泣きまくり、今だに思い出して泣けるくらいで(涙、涙・・・)
    でね、これ実は、私にススメて貸してくれたのが、映画館に勤めている友達で、彼女も岩手出身なんですよぉ。今ね、彼女のお父さんが入院しちゃって、大変なの・・・。
    彼女もかなりの映画マニアで、すっごく優しくて純粋な人なんだぁ。
    なので、なんだかその友達と睦月さんとを、連動して考えちゃう。
    ジョニーのファンではないけど・・彼女はジョシュ、ジョシュってうるさい(笑)
    記事褒めてくれてありがとうね・・・。
    でも、きっと読んだことない人は、「さっぱりワケわからん」と、思っているでしょうね^^;

  3. 初めまして。
    あたしもこの作品大好きです!!
    初めて読んだのは10年以上前なのですが今でも繰り返し読んでます。
    江國さんの作品は言葉のひとつひとつがきらきらしていて心にすんなりと入ってきて大好きなんですよ。
    誰もが経験した気持ちをすごく丁寧に表していると言うか…。
    がたがたと喚いてしまって失礼しました★

  4. ヨゥ。さんへ
    コメント有難うございます!ヨゥ。さん!!
    あちらでお見かけした方が・・・*^^*
    とっても、嬉しいです!!
    そんなぁ、「ガタガタ喚いてしまって」なんて言わないで下さい。。。とっても嬉しいのに!
    こうして江國さんの小説を読んだことのある方とお話できるなんて、本当嬉しいです本当、江國さんの文て・・すごく素敵!とても辛くて、痛くてたまらないですけど・・・。
    ところで、ヨゥ。さんのアドレス、見に行こうとしたら行けませんでしたよ・・・携帯livedoorのページになってしまいます。
    もしやヨゥ。さんはモブログでしょうか?
    携帯からでないと、今って、行けないURLになってるのでしょうか・・・。

  5. とらねこさま。
    実は投稿の際にエラーが出たのですが、そのせいでしょうか…。
    まったくの普通のブログです。てかモブログがなんなのかわかりません(笑)
    『花華戯言』というヘタレブログです。

  6. ヨゥ。さんへ
    今行ってみたらやはり携帯livedoorの総合案内ページになってしまい、ヨゥ。さんのブログに飛べませんでした。
    そこで、コメント欄をチェックしてみたら、記入していただいたURLがblog.m.livedoor.ドメインになっていました。なので.mを消して行ってみたら、ヨゥ。さんのページに行けましたよ。
    他のブロガーさんもおそらくそのURLでは飛べないと思いますので、ご注意下さいね。
    モブログは携帯でのブログですね。PCのブログとは設定が少し違っていて、できること等もそこのシステムによって違うようです。

  7. とらねこさま。
    アドバイスありがとうございました!!
    携帯でしかいじってないので全く知らずに…。
    ご迷惑おかけしました。

  8. ヨゥ。さんへ
    いやいや、実は私もPCに繋いだのがここ1ヶ月でして。そのためその気持ちすごく良く分かります。
    もしよろしければ、携帯とPCの機能の違いなどお教えできるかと思いますので、もし分からないことがありましたら、気軽にお聞き下さいね〜




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